太平洋戦争のさなか、事実に基づかない大本営の発表を伝え続けた実在のラジオアナウンサーたちが抱える苦悩と葛藤を取り上げたドラマ。
1940年12月、国は内閣情報部や陸海軍の情報事務を一元化する「情報局」を設置。新聞や雑誌、ラジオに対する統制を強化するようになる。社団法人日本放送協会(26~50年、現NHK)も当局の指示の下、戦意高揚や国威発揚を図り、偽情報で敵軍を混乱させる「電波戦」に参加するよう求められる。
41年12月8日。戦前から相撲中継などで人気のあった和田信賢アナウンサー(森田剛)は、同僚の館野守男アナウンサー(高良健吾)と太平洋戦争宣戦布告の臨時ニュースを放送。その後も2人は緒戦の勝利を勇ましい口調で伝え続け、人々を熱狂させるのだが…。
メディアの視点から太平洋戦争を描いた意欲作。主演の森田をはじめ、高良、橋本愛、安田顕らが繊細で熱量の高い演技を見せ、戦時中、言葉で世論を動かした人々の高揚感と、深い後悔の思いを再現する。
本来の報道の役割から、「国を優位に立たせるため人々を扇動する」存在へと変質していく様子を丁寧なタッチで描き出した。今もなお世界中で扇情的な情報やフェイクニュースが発信され続けている。先人たちの記憶から学ぶものが多いのではと感じさせてくれる一本だ。
シネマ5bisで31日(土)~9月6日(金)の午後0時半。(この日程以外も上映あり)
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「大分合同新聞ムービーアワー」は厳選した映画をお届けするプロジェクト。テーマや話題性を吟味した作品を週替わりで上映します。