薬物依存、売春、母親からの虐待―過酷な環境から抜け出そうと、人々の助けを得ながらもがいていた若い女性が、新型コロナウイルス禍の中でたどった運命とは。実際の出来事を基に入江悠監督が描いたドラマ。
杏(河合優実)は売春相手が薬物中毒を起こしてしまったことがきっかけで、警察に捕まってしまう。刑事の多々羅(佐藤二朗)は自らが主宰する薬物更生者の自助グループに参加することを勧める。やがて、杏は多々羅を頼り、グループに通うように。彼を取材する週刊誌記者、桐野(稲垣吾郎)とも知り合いになる。やがて、彼女は老人ホームの仕事を始めるが…。
強さと弱さを合わせ持った人間くさい登場人物に加え、今も残るコロナ禍の記憶。リアリティーのある物語が胸にズシンと迫ってくる。
入江監督は「あの時期、社会生活が制限され、人々は分断、孤立化した。僕自身友人2人を亡くしたが、コロナということで連絡することもなく、思いが残った。社会を見つめた作品を生まなければと感じた」。フィクションの要素をできるだけ排除し、ドキュメンタリーを撮っているような思いで取り組んだと語る。
主演の河合も取材に同行。モデルとなった女性に寄り添いながら、役作りに取り組んでいたという。
「今後も同じようなことが起こるかもしれない。次は孤独を感じる人に手を差し伸べることができるのか。考えるきっかけになれば」。監督入魂の一作。
シネマ5で7月6日(土)から12日(金)の午後0時20分、同7時45分。9日同7時45分の上映は休止。(この日程以外上映あり)
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