今年の高校3年生は高校生活をコロナ禍で過ごした世代。1、2年生の時は制約があった学校行事はコロナ禍前のペースに戻った。その影響もあり、全体的に受験勉強の進み具合が昨年、一昨年よりも遅いように感じている。コロナ禍では授業は淡々と進み、生徒は家にいる時間が長かった。必然と取り組む学習が前倒しになり、勉強時間が多くなっていたとも言える。
11月に入れば大学入学共通テストの準備が本格的に始まる。国公立大2次試験の準備が十分にできないまま、共通テストを迎える生徒がいるのではないか。
だが、まだ遅くない。10月下旬から志望校の過去問に取り組んでも、共通テスト1カ月前の12月中旬には少なくとも5年分は終えられる。1日1教科、1週間で1年分解くとよい。しっかり時間を計って実際の試験に近い環境で、今の自分がどこで得点できて、どこの対策が必要なのかを把握することが大切だ。合格最低ラインは6割とされている。まずは6割の得点を目指して過去問の復習に取り組むとよい。今から挽回することは十分に可能だ。
共通テスト後には予備校各社の合格判定が出る。A~Eの5段階でC判定以上になると合格可能性が50%以上。ただ実際は同じC判定でも志望校の出願に、なんとかこぎ着ける生徒と、回避して堅実な出願を選ぶ生徒に分かれる。出願判断の境目は、それまでに2次試験の準備をどの程度進めてきたかということにある。
「志望校の過去問を網羅した『赤本』を解き終えている」「志望校の模試に参加して復習も終えている」という経験がある生徒は、共通テストから2次試験までに何をすればいいのか把握しているため、志望していたところに出願できる。一方、共通テストの準備だけで年を越してしまった生徒は2次試験の準備不足を自覚しているため、志望校の出願を回避するか、出願したとしても不安を消せずに2次試験を迎えることになる。
「2次試験の準備ができている」という状態は「過去問をすらすら解ける」ということではない。時間を計って自力で過去問を解き、答え合わせをして自分はどこが足りないかを自覚できればよい。
この時期になると「2次試験の問題に取り組んでいるがなかなか正解できない」「このままで入試本番に間に合うのか」と不安を感じている生徒も多いだろう。すぐに結果や手応えを得たい気持ちは分かるが、大学入試は1~2カ月取り組んだところで合格できる実感を得られるような簡単な試験ではない。多くの先輩たちは「十分な準備ができたかどうか分からないが自分はやってきたんだ」という自信だけを頼りに入試本番を迎えて力を尽くしてきた。合格を手にするまではやり続けるだけだ。まさに江戸時代の米沢藩主、上杉鷹山の言葉「なせばなる なさねばならぬ 何事も ならぬは人のなさぬなりけり」である。