最後の五輪個人種目で「桜を咲かせる」ことはできなかった。ノルディック複合個人ラージヒルの渡部暁斗は、課題の前半飛躍でK点(128メートル)に届かず、後半距離で懸命に前を追ったが、表彰台との差は大きすぎた。最後は一礼してゴール。「意外とあっさり終わっちゃうものなのか」と、落胆を隠せなかった。
距離の強化との両立に苦しんできた飛躍。37歳となり、昨夏には「速いものを追えなくなってきた。(踏み切りが)遅れたりする」と目の衰えも自覚した。
今季限りでの引退を決めてから「五輪で奇跡を起こす」と何度も口にしてきた。3大会連続メダリストの自信の表れと思われたが本音は違った。「そう言わないと心が保てない。ぎりぎりのところ」。思うように調子が上がらぬまま五輪前最後のワールドカップを終えた後、ふと漏らした。
現実は厳しくとも、五輪に参加するだけの自分を許さず、最後までメダル争いにこだわった。「散っていく自分の姿を見届けるためにやってきたのかなと最後に思った。それはそれで強さかな」と達観した様子だった。