示唆に富む報道、どう届けるか

東京大学大学院情報学環教授の林香里さん=本人提供

 企画作品は、社会に潜む課題を粘り強い取材で掘り下げた2件が選ばれた。神戸新聞社の「あの熱狂の中で」は、2024年の兵庫県知事選をめぐる熱狂や分断、メディア不信を丹念に追い、SNS時代における民主主義や報道の在り方を問いかけた。京都新聞社の「隠れた刃」は、7年3か月に及ぶ情報公開請求と訴訟により開示させた資料から強制不妊政策の実相を明らかにし、国家政策によって奪われた一人ひとりの人生と尊厳を掘り起こすとともに、障害者を取り巻く現代の課題も問い直した。

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 企画作品の受賞作はともに画期的かつ規模の大きな取材で組織ジャーナリズムのあるべき姿を体現し、示唆に富んだ。

 神戸新聞社の「あの熱狂の中で」は、何が正解か分からない状況で記者が現場に飛び込み、社会の一員として市民の姿を伝えたことが良い。メディア不信は簡単に消えないだろうが、謙虚に、粘り強く解決策を探る重要性を示した。

 京都新聞社の「隠れた刃」は7年をかけて勝ち得た一次資料を基に取材し、権力の不条理を暴いた。生殖や障害を巡る問題は今につながるが、従来は断種実行側の情報が欠けていた。訴訟で解明の道が開き、研究者にもありがたい。

 情報を社会で共有し知識を培っていくのは民主主義の根幹であり、ジャーナリズムの存在意義だが、どんな素晴らしい記事も読まれなければ意味がない。ネット社会において、良質な情報をどう市民に届けるか。新聞社だけでなく、情報産業に携わる人々や研究者も一緒になり、社会的な論点として考えていかなければならない。

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 はやし・かおり 1963年生まれ。愛知県出身。2009年より現職。2021年から東京大学理事・副学長も務める。博士(社会情報学)。専門はジャーナリズム/マスメディア研究。第40期日本メディア学会会長。日本学術会議連携会員。放送倫理・番組向上機構(BPO)放送人権委員会委員などを歴任。

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