新聞は時代の先読む知識のベース

バスケットボールBリーグチェアマンの島田慎二さん

 ―新聞は購読していますか。

 一般紙を購読しています。新聞紙の手触りが好きです。スマートフォンでデジタル記事も読みますが、ベースは紙です。そういう世代なのでしょう。紙の方が、文字が大きく見やすい点もあります。ペンを持ち、読んだ記事には全てチェックをつけていきます。「受験勉強」のような感覚で、頭の中にインプットする狙いがあります。新聞は見出しでおおまかな内容が理解できるので、記事を全て読み込まなくても、多くの情報を一覧し「面」で吸収できるのもいいところです。

 ―どんな欄を読みますか。

 幅広く読みますね。限定はしない。社会、政治、経済、スポーツ、社説も読みます。新聞はオピニオンリーダーとしての主張がきちんとある。情報掲載だけではなく、各新聞社の方針やスタンスがあり、社説などはその社の意思のような話が書いてある。そこは私もすごく大事にしているところで、Bリーグのトップとして、賛否がある中で自らの考えを明確にしたい。

 リーグは2026年からの改革で、戦績だけではなく年間の入場者数や売上高を毎シーズンの最上位カテゴリー参入条件とするなど競技とビジネスを両輪として発展を目指します。スポーツ界では異例の取り組みで賛否はありますが、リーグ運営に多くの賛同を得られなくても、明確に伝わり、応援したいと思ってくれる人がいればいい。リーグの発表事項や取り組みを補完する意味でブログや動画を用いて情報発信をし、主張を明確にする私のスタンスは、新聞が大切にしている部分に似ています。

 ―新聞を読み始めたのはいつですか。

 大学生のときです。日本大学法学部の新聞学科に、ジャーナリストを目指して進学しました。新聞にはそもそも興味があり、最低限の勉強はしないといけないと1年時から読み始めたと記憶しています。

 ―読み続ける理由は何ですか。

 正確な情報収集のベースが新聞だと思うからです。自分で考え、判断するために、情報は広く集めた方がいい。インターネットや交流サイト(SNS)だけで得た情報は浅く、中にはフェイクニュースや生成AI(人工知能)で作成された記事も含まれて怖さがあります。一方で新聞は信ぴょう性が高い。記事は取材した記者が書き、毎日発行されるため、内容に正確さと深さを兼ね備えています。週刊誌や月刊誌は取材の深さがあるけど、瞬発力が足りない。デイリーでなおかつ深い、というのは新聞の強みだと思います。

 ―新聞を読む習慣が役立つときはありますか。

 プロ野球の結果など、その日のニュースを職場や営業先などで話すことはほぼありません。ただ、何かを決めるときの判断材料になっていると思います。毎日の積み重ねは自身の知識や意識のベースになっている。Bリーグトップとしての意思決定など、時代背景の把握や予測が必要となる際に、間接的に生きていると感じます。また、さまざまな業界の人と会話する上で、世の中の動きや経済状況の最低限の知識がなければいけない。そういう価値があると考えて新聞を読んでいます。

 ―Bリーグの活性化に新聞はどう役立っていますか。

 各地域に地元紙があり、クラブがあります。勝敗や戦績のほか、社会貢献活動などを取り上げてもらえる存在はクラブにとって欠かせません。Bリーグは22年に地方新聞26社とパートナーシップを結びました(現在は終了)。各地域にはクラブの情報だけではなく、Bリーグの意義や改革の理由なども伝えたかったからです。

 ―「新聞離れ」は進んでいます。島田チェアマンが新聞社の経営に関わるとしたら、どんな施策を考えますか。

 私が他業界の経営について述べるのは恐縮ですが、その上で考えられるのはまず、外国人をターゲットにすることではないでしょうか。今後、インバウンド(訪日客)や在留外国人はさらに増えると思います。Bリーグは各地でアリーナ建設が進んでいるのは、人口減少の中でも地域経済を盛り立てる訪日客らの需要を見込むからです。新聞も、新たなターゲットに向けた記事を充実させることが読者を増やすために有効ではないでしょうか。

 また、新聞の存在価値を伝えるようなプロモーションや営業活動により力を入れるのはいかがでしょうか。20年ほど前、インターネットが急速に広まった時、インターネット企業が商品販売などのPRにライバル関係の媒体であるテレビを活用しました。新聞は新規メディアではありませんが、若者が親しむ動画の投稿サイトやアプリなどによる価値のPRは有効かと考えます。例えば選挙の投票先は、自分で考え、判断する必要があります。SNSだけではなく、新聞の正確でタイムリーな情報の蓄積が大変重要だと伝えることも手段の一つです。

 ―価値を伝えるためには、他にどんな方法があるのでしょうか。

 何かきっかけが必要だと思います。新型コロナウイルス禍では、ラジオがムーブメントを起こしたよね。「終わったメディア」だと言われていたのに、在宅勤務時に最適だと評判になって息を吹き返しました。新聞も何かきっかけを生めばいい。少しくだけた話になりますが、「新聞を読んでいるとモテる」「知識があることはイケてる」のように宣伝する。PRするうえで、そういう「空気感」を生むことは大事です。例えば、管理職に就いている人の新聞購読率と可処分所得の相関関係をデータで示す、というのはどうでしょう。新聞には価値があります。もったいないと思います。

 しまだ・しんじ 1970年生まれ。新潟県出身。起業家・経営者として、法人向け海外旅行会社、海外出張専門の旅行会社、コンサルティング会社を創業した経歴を持つ。2012年から20年まで、千葉ジェッツふなばしの運営会社の社長や会長を務める。Bリーグでは理事、副理事長を経て、20年からチェアマン。25年9月、日本バスケットボール協会の会長に就任。

 この記事は新聞週間に合わせて、日本新聞協会の会員新聞・通信・放送社が共同制作したものです。

最新記事
為替相場 15日(日本時間8時)
大豆巡り中国に「報復措置」
スペインに「罰」警告
カーク氏に「大統領自由勲章」
NY円、151円台後半