国の文化審議会は26日、滋賀県の「彦根城」を2027年の世界文化遺産登録の推薦候補に選定するのを見送った。滋賀県や彦根市は、江戸幕府の長期安定を支えた「大名統治システム」を象徴する存在だと主張したのに対し、文化審は歴史的な価値などの説明に「課題が残る」と判断した。
世界文化遺産の登録範囲拡張を目指す岩手県の「平泉」も「主張の論拠が不十分」と退けた。27年にユネスコで登録の可否を審査される日本の候補はなくなった。彦根市の田島一成市長は記者会見し「課題を修正し推薦を勝ち取りたい」と、28年の登録を目指す考えを示した。
彦根城は将来の登録候補として1992年、暫定リストに記載。政府は23年、推薦書の提出前にユネスコ諮問機関が関与・助言する「事前評価」制度を初めて申請した。諮問機関は24年10月、彦根城単独で大名統治を十分表現できるのかが弱点として、他の城郭と組み合わせた推薦の検討を求めた。
これに対し、県や市は単独での推薦を主張。価値の説明を手厚くするなどして25年7月、推薦書案を再提出していた。