高知大病院と医療系企業「BiPSEE」(東京)はこのほど、うつ病患者の気分が落ち込む症状「抑うつ」を、仮想現実(VR)映像を用いたデジタル療法で軽減できることを特定臨床研究で確認したと明らかにした。医療機器としての承認を目指し、治験開始に向け準備を進めている。
同病院などによると、うつ病患者の中には抗うつ薬の効きにくい人や、論理的な理解が必要とされるタイプの精神療法が向かない人もいる。
臨床研究では、VRとスマホアプリを組み合わせた8週間のプログラムを自宅で実施。仮想空間の海に漂う生物を、色や形などの指示に従い一定時間見つめ、自発的に注意を向ける練習を行った。自分の内面ばかりに向いてしまう注意をコントロールすることが狙いという。
研究に参加した患者47人のうち、VR療法を実施した24人は、うつ病のスコアが減少。追跡調査でも効果が継続した。
同社の代表取締役で高知大医学部の松村雅代特任教授は「誰でも感覚的に理解できるのはVRの大きな強み。うつ病治療の選択肢の一つにしていきたい」と話した。