岡山県倉敷市の大原美術館が所蔵する代表的な作品で、スペインの巨匠エル・グレコ(1541~1614年)が描いた「受胎告知」の修復が66年ぶりに進む。表面の汚れを取り除き、透明感のある本来の色彩を取り戻す目的で、スペインから招聘した絵画修復士が7月中旬から作業。描かれた約400年前の姿に近づけた上で、9月以降に再公開する予定だ。
作品はエル・グレコが16世紀末ごろに描いたとされる宗教画。天使ガブリエルが聖母マリアにキリストを身ごもったことを告げる聖書の場面をテーマにしている。
エル・グレコ作品の修復を手がけた経験を持ち、スペインの首都マドリードのプラド美術館から招かれたエバ・マルティネスさんが作業に当たった。過去の修復で塗布され酸化した、絵を保護するための溶剤「ワニス」や、過度に上塗りされた絵の具を、特殊な溶剤を含んだ綿で除去。元々の絵の具が欠けた部分を充填して色を補った。
7月下旬に記者会見した際は、修復前と修復中の実寸大パネルを並べて作業内容を説明した。