「突き飛ばされ、尻もちをついた」と麻薬取締官が証言して、公務執行妨害罪に問われている男の公判で、逮捕時の一部始終が撮影されたスマートフォンの動画には転倒する場面が写っておらず、証言と矛盾していることが5日、分かった。取締官は法廷でも供述しており、弁護側は虚偽証言として偽証罪などで告発する方針だ。
起訴状などによると、25年2月、麻薬取締法違反の疑いで、関東信越厚生局麻薬取締部の取締官らが神奈川県藤沢市の会社社員寮を家宅捜索した。その際に通りがかった経営者の桜井智久被告(40)が取締官を右手で突き飛ばしたとされる。取締官が通報し、神奈川県警が被告を逮捕した。
6月27日に横浜地裁で開かれた証人尋問では、寺尾航取締官が「全力で走ってきて右手で肩を押され、尻もちをついた」と証言した。
上司で警視庁から出向していた奥田孝太朗取締官(当時)も同様の証言をした。一方、起訴後に検察から被告に還付されたスマホに、事件当日に撮影された動画が見つかり、7月31日の公判で証拠採用された。