東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡り、東京大や福島大などの研究チームは原発から25キロ以遠の北太平洋全域で、放射性物質トリチウムの濃度変化をシミュレーションした結果をまとめた。地球温暖化による海洋循環の変化などを加味して2023年の放出開始から70年余りを予測したが、濃度増加は見られないとしている。
チームは東電の放出計画に基づき、海洋の流れなどを数値化できるモデルを用いて、23~99年のトリチウム濃度分布を予測した。これまで25キロ圏内の実測や分析結果はあったが、範囲を北太平洋全域に広げたのは初めてという。
海水中のトリチウムには天然に存在するもの、1950~60年代の核実験や稼働している国内外の原発などから出たものが含まれ、処理水放出前の25キロ以遠の濃度は1リットル当たり0・03~0・2ベクレルだった。
シミュレーションでは処理水放出で増える濃度は0・1%かそれを下回る程度で、チームは「処理水の有無による違いは測定できないほど小さい」と指摘した。