人工多能性幹細胞(iPS細胞)から心臓や血管の細胞を作る際に必要なタンパク質を、植物から生産することに成功したと、理化学研究所などのチームが24日までに国際科学誌に発表した。実用化すれば安価で大量生産できるようになる可能性があり、心筋梗塞や心不全などの患者に向けた再生医療が大きく進むことが期待できるという。
iPS細胞から作った心臓組織を移植する再生医療では、効率的な分化にタンパク質の一種「サイトカイン」が不可欠。現在は大腸菌や哺乳類の細胞を用いて製品化されているが、ウイルス汚染などのリスクがあった。
升本英利京都大特定教授=当時・理研上級研究員=らのチームは、植物が持つ安全性の高さ、低コスト、大量生産可能という特徴に着目。生育が早く遺伝子組み換えが簡単なタバコ属の植物を用いて開発を進めた。
実際に人のiPS細胞を使い、サイトカインを加えて心筋細胞などが効率的にできるかを検証。同等の効率を発揮し、細胞の生存率にも影響はなかった。必要な濃度はやや高くなったという。