オウム真理教事件による被害救済のため破産管財人を務めた阿部三郎弁護士(2010年死去)が、教団所有だった広大な土地の扱いを巡り、和歌山県紀の川市に宛てた書簡が16日までに、同市で見つかった。処分先が決まらず、教団名義が残り悪用される懸念を示し、寄付を申し出る内容。「現地が今後も教団らと全く無関係という事実をもって、まとめあげることが本職の真意」と熱意を込めて記していた。
書簡は08年10月付。市は09年に寄付を承諾し、現在は公用地となっている。「オウム真理教犯罪被害者支援機構」副理事長の中村裕二弁護士は「阿部さんは管財人として被害者補償を進めるとともに、再びテロの拠点にされないため、教団の土地をなくそうと奔走していた」と振り返った。
土地は約1万5千平方メートルで山間地にある。1988年に当時の教団幹部が取得し、近隣住民によると、信者らが共同生活をしながら、果実栽培をしていた。教団は96年に破産宣告を受け、管財人となった阿部氏が被害者賠償に充てるため、所有財産の処分に当たった。