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【ミドルマネジャーに贈る勇気の出る言葉】田中和彦

田中和彦【ミドルマネージャーに贈る勇気の出る言葉】
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弱さを認め、謝ることこそ、
本当の強さの証拠である
     マハトマ・ガンジー

 ビジネスには絶対的な正解はない。事業戦略がもくろみ通りにいかず、方針の変更を余儀なくされることなど、ごく当たり前にあることだ。しかし、そういう時に素直に間違いを認め、部下に謝ることのできる上司は意外に少ない。なぜ上司は部下に謝罪しないのか? いくつか理由は挙げられる。
 ①上司としてのプライドが許さない 上司という立場は組織の要請上、マネジメントする役割を担っているだけで、上司の方が部下よりも偉いわけではない。なのに、自分が上の立場だという驕(おご)りから、素直になれないのだ。②評価を下げたくない ミスを認めることで厳しい評価が下るのを避けようとする保身的な行動だ。責任逃れだけならまだしも、部下に責任転嫁するような上司には誰もついてはいかないだろう。③そもそも自分に自信がない 人間は自信のなさから、その場をごまかしたり、取り繕ったりするもの。「謝る」という行為は、実は勇気のいることで、こういう時に人としての度量が問われる。
 私のかつての上司で「戦略が間違っていた。本当に申し訳ない。見直したので改めて一緒についてきてほしい」と部下に対して頭を下げてくれた人がいた。その一方で、業績不振を環境変化や顧客のせいにするなどして、変更理由もうやむやなまま、新しい方針をしれっと打ち出す上司もいた。
 部下として、どちらの方が頑張ろうと思えたかは、言うまでもない。上司が体面やプライドを気にして過ちを認めないと、部下は疑心暗鬼になり、上司の顔色ばかりをうかがうようになる。ものが言いやすく風通しのよい職場、つまり心理的安全性の高い職場からは程遠くなるということだ。
 上司が部下に謝罪できる組織が強いのは、共通のゴールに向かって、お互いに言うべきことが言い合える風土が確保できるからである。

Profile

たなか・かずひこ プラネットファイブ代表取締役。1958年生まれ。元就職情報誌の編集長。年間100回以上管理職研修の講師を務める。マネジメントやリーダーシップ関連の著書多数。別府鶴見丘高出身。

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