機械部品調達のAIプラットフォーム「meviy(メビー)」は、3Dモデルをアップロードするだけで見積もりと発注が行え、調達時間を大幅に短縮します。
今回は板金溶接をテーマに、開発担当の松本さんと遠藤さんに話を聞きました。

メビー板金溶接開発チーム 左:松本 右:遠藤
サービスの開発理由は何か。板金溶接の技術が衰退しかねない深刻な問題
――板金溶接に関する深刻な課題
松本:私たちのお客さまである設計者の皆さまにとって溶接部品を手配する際の課題は①調達リードタイムの長さ、②後継者不足の2点です。まず前者は設計者の皆さまからよく挙がっている声です。
一般的に、今までの溶接部品の調達は次のような流れになっています。
● 設計:3Dでモデリング後に紙図面を作成、複数部品構成なら組図も
● 見積もり:紙図面で加工会社に見積もりを依頼し、回答待ち
● 発注:上司に見積書の承認を取得し、購買部門に発注を依頼
● 調達:発注後、製作期間を経て加工会社より納品
この工程全体でおよそ3〜4週間ですから、溶接しない製品の何倍もかかる覚悟がいります。
また後者については、少子高齢化と労働生産年齢人口の減少のなかで溶接作業に従事する職人、いわゆる溶接工の方の高齢化が進んでおり、若手不足で技術の継承が危ぶまれています。板金加工業者間で溶接加工を外注する話も頻繁に耳に入るようになり、設計者が繁忙期に待たされる要因の一つにもなっていますね。
――溶接工頼りの現状
松本:板金溶接部品の設計には、展開(部品同士の構成)や溶接個所の決定、脚長や溶接長など、多くの溶接仕様を検討する必要があります。そのため多くの設計者は完成形状の図面だけを描き、溶接仕様まで細かく指示しません。
そうすると溶接工がその作業を代行する事になり、見積もり回答が長引く、という悪循環を生んでいます。また将来提案力のある匠の溶接工が減ってしまえば、仕様を決定する人材が途絶える恐れさえあります。
そこでこれらの課題を解決するため、メビーの板金溶接は3Dモデルだけで簡単に短納期で部品調達できるだけではなく、使用することで溶接について学習できる仕組みを目指しました。
時間創出と技術継承を。板金溶接サービスが誇る3つの特徴
簡単操作と自動見積もりによる時間短縮
――わずか2つの手順で簡単見積もり
松本:溶接サービスの特徴の1つ目は、手順が簡単で設計から調達までのリードタイムを短縮できる点です。溶接後の製品姿の3Dモデルをメビーにアップロードし、板金溶接部品を選んで「溶接構造にする」というボタンを押すだけで、簡単に見積もりができます。
以降はAIが溶接位置と仕様を自動提案して、その場で金額と納期を表示します。納期は最短6日で出荷できます。
これまで加工業者と行っていた紙図面のやり取りや、「おまかせ文化」により時間がかかっていた見積もり回答待ちも不要となるため、設計・図面作成・調達までのリードタイムを短縮できます。

自動で溶接構造モデルを作るリモデル機能
――メビーだからこそ蓄積される溶接の知識
松本:メビーの板金溶接サービスには「リモデル」という機能があります。実は見積もりに使う3Dモデルは構想設計時のものでよいです。例えばよくある一定の厚さの箱は溶接部にするスリットや逃げ穴をつくらず、切削加工の様な立方体の中央を凹ませたシェル状態でもアップロードできます。
すると、AIが板金溶接部品として見積もれるようにモデルを作り変えてくれます。変換後のモデルで曲げ加工や溶接加工が提案された部分を見ると、溶接設計の理解が深まります。

詳細な溶接仕様についても同様です。溶接の位置や方向、通常溶接やスポット溶接といった溶接方法などの仕様をAIが自動で提案し、溶接不可能な形状には警告を表示します。
また、一部溶接を片側溶接にしたり断続溶接に変えることもできますので、歪みやコストを低減したいときもメビー上で試行錯誤できます。
複数の溶接方法を選択可能
――仕様に応じて選択できる溶接方法
松本:溶接方法は次から選択できます。
● おまかせ(アーク溶接またはレーザー溶接)
● アーク溶接
● レーザー溶接
● スポット溶接
基本は「おまかせ」を選択いただき、指定が必要な場合のみアーク/レーザー、平面ならスポットを選択してください。また平面同士の溶接で十分な面積が確保されていれば、自動的にスポット溶接が提案されます。

バックグラウンドは問われない。文系出身の私がメビーの開発をやり遂げられた理由
――新人の頃から携わったシステム開発
遠藤:私は文系出身で入社3年目(2025年5月現在)、入社後に初めて溶接を学びました。その状態から1年目に研修でメビー板金溶接のβ版サービスの顧客ヒアリングを、2年目にスポット溶接の開発を担当しました。
ベテランの溶接工の方や現役の設計者の方からヒアリングするとき、はじめは専門用語も分かりませんでした。しかし、社内の元設計者や営業経験者など、多彩なメンバーが支援してくれました。おかげで必要な知識を着実に身につけながらプロジェクトを進められました。設計者の声を最優先する姿勢を学び、満足度の高いサービスを開発できたと自負しています。
こだわったのはUI/UXとアルゴリズム。設計者の貴重な時間を創出するために
――マウスの動線まで分析したUI/UX
遠藤:「時間創出」のために画面の分かりやすさや使いやすさにこだわりました。特に難しかったのは見積もり操作で、説明書不要の直感的なUIを目指し、お客さまのマウス動線を分析してボタン配置を最適化しました。
また、私が長期で携わったのはスポット溶接の自動見積もり機能です。アーク溶接などとは溶接部位の検出原理や提案する溶接仕様が異なるため、重なっている面の検出などのアルゴリズム構築で苦労しました。
メビー板金溶接は国内外で複数の特許を取得済み
――特許は板金溶接のアルゴリズムだけでなく新規のスポット溶接も
遠藤:同様の機能をもったプラットフォームはグローバルでもユニークで、いくつか特許を取得した技術があります。現在、国内で登録が完了しているのは次の3件です。
● 溶接箇所の自動検出・提案
● 自動モデル変換(リモデル)
● メニューを用いた溶接条件変更・見積更新
海外向けにも出願済みで審査中です。
私の携わったスポット溶接の溶接箇所の検出とデータ連携の特許も同様に出願しています。

今後も絶えず進化するプラットフォーム
――今後のメビー板金溶接サービス
松本:2025年3月にはオイルパンなどを想定した漏れ試験のオプションや、ソケット取付が指示できるサービスをリリースしています。今後は、狭い箱の内側などで溶接が届かない部分を自動で検出する機能や、クリーンルーム対応の洗浄サービスなど、更なる改良を予定しています。
メビーの価値である「時間創出」を実現するため、毎月システムをアップデートしています。設計者の方からのVOC(Voice Of Customer)やメビーで自動見積もりできなかったデータを分析することで、見積もり範囲の拡大や、使いやすさを改良していきます。
「メビウスの輪(無限の象徴)」をサービス名の由来としているため、今後もメビー板金溶接サービスを進化させていきます。

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