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広島高裁再び運転不可 伊方原発は地震、火山に不安 プルサーマル

 「地震にも火山にも不安がある」。四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を差し止めるよう山口県内の住民3人が求めた仮処分の即時抗告審で、広島高裁は17日、運転を差し止める決定をした。3号機は現在、定期検査で停止中。運転禁止の期間は、山口地裁岩国支部で係争中の運転差し止め本訴訟の判決までとした。1、2号機は巨額の安全対策費などを理由に廃炉が決まっている。
 大分県の対岸にある伊方原発で、3号機の運転差し止めが認められたのは、火山リスクを重視した2017年12月の広島高裁決定に続いて2度目。翌年9月には四国電の異議が認められたが、高裁レベルで2度までも運転を差し止めた司法判断は重いと言えよう。
 今回の即時抗告審では、国内最大級の中央構造線断層帯が佐田岬半島に立地する伊方原発の近くを通るかどうかや、火山噴火リスクに対する評価などが争点になった。
 住民側は小松正幸・元愛媛大学長(地質学)の見解を基に「伊予灘沖約8キロにある活断層帯は中央構造線の本体ではない。本体は原発近くの沖合600メートル~1・5キロにあり、地震を引き起こす可能性がある」と指摘。詳細な調査が必要だと訴えた。
 広島高裁は、四国電が佐田岬半島の北岸部に活断層はないとして、活断層が敷地に極めて近い場合の評価や十分な調査を行わなかったとの判断を示した。火山噴火リスクについては、約9万年前に阿蘇山で起きた過去最大規模の「阿蘇4噴火」を取り上げ「火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいとは評価できない」とした。
 大分県内には阿蘇4噴火の痕跡が、豊後大野、日田、竹田の各市に残っている。「原尻の滝」「沈堕の滝」(いずれも豊後大野市)などだ。
 今回の決定前に四国電は3号機のプルサーマル発電で使い終わったプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を全国で初めて取り出しており、プルサーマルにも注目が高まった。
 政府や電力会社は「核燃料サイクル」の一環として、普通の軽水炉型原発でMOX燃料を燃やすプルサーマルを進める。
 だが、プルサーマルには(1)核分裂を抑えるために使用する制御棒の効きが、ウラン燃料に比べて悪くなるとの指摘がある(2)伊方原発3号機の核燃料取り出し準備の作業中、原子炉容器上部で燃料を固定している装置を引き上げようとした際、制御棒1体が一緒につり上がるトラブルがあった(3)使用済みMOX燃料は使用済みウラン燃料より強い放射線を出し、発熱量が高い。行き先が決まっておらず、敷地内のプールに長期的に保管される―などの問題点がある。
 舩(ふな)橋(ばし)晴(はる)俊(とし)法政大学名誉教授(環境社会学)は共著「原発震災と避難」で「民主主義国家で裁判所は社会制御システムの重要な役割を果たす。政府の政策が不適切な場合、法廷は覆す司法判断を下すこともある」と提言した。広島高裁の決定は、この一例だろう。
2020年1月18日

用語解説

プルサーマル

  使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜた燃料(MOX燃料)を、現行の原発で利用すること。国や電力会社はウラン資源の有効活用と主張する。核兵器の材料にもなるプルトニウムを扱うことに批判も多い。

論説

 

 新聞ジャーナリズムの真骨頂が「論説」です。朝刊2面に掲載。現代社会が抱える広範囲な問題を真正面から捉え、公正な目で、批判すべきは批判して警鐘を鳴らします。少々硬く長い文章ですが、じっくりと読み込むことで物事の本質をしっかり見極めることができます。明日を考える指針の一つにしてください。

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