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202042日()

東西南北

2019.11.25



 自宅から自転車で1分少々。毎朝、近くの温泉で頭の芯をシャキッとさせる。別府市民の一人としては、このルーティン(決まった一連の動作)なくして1日は始まらない▼さらりとした無色透明の単純泉に身を委ねる。昼を過ぎても手足の指先は温かい。ここの「ジモ泉」は入湯料100円。回数券を使えば半額で入浴できる。湯の街暮らしの特権であろう▼縮こまった体の節々を湯船で伸ばしていると、たまにふと東日本大震災の被災地を思い出す。津波で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町に、市民有志が別府八湯の源泉をトラックで運び込んだのは2011年6月だった▼園児用プールを浴槽にした。「こんなにうれしいことはない」「元気が出る」「家族も自宅も失った。地獄の日々だけどこの湯は天国や」「涙が止まらない」…。立ち上る湯気の向こうで、疲弊した被災者らの顔がほころんだ。温泉ってすごいな、と改めて感じた▼泉都の外郭団体が今秋、自慢の天然湯をエアーハウス型の浴場施設ごと運ぶ新事業を始めた。23、24両日は都内のイベントへ。12月は関西の大学の学園祭に持っていく。ほぐれた笑顔が「あちぃ湯」に溶けるだろう▼朝晩の冷え込みが日に日に強まり、ひとっ風呂のありがたみが心にしみる季節になった。気付けば師走がヒタヒタと忍び寄っている。〈温泉は近場がよろし黄落期〉高沢良一。冬が駆け足でやってきた。
2019年11月25日

東西南北

 

 大分合同新聞の顔とも言えるコラムです。朝刊1面に掲載。短い文章ですが、政治や世の中の動き、いま話題の事柄を鋭く、時に風刺の効いた、心温まる筆致で描きます。故事来歴などのうんちくも豊富。文章に親しみ、物事を考えるヒントにもなる。それが「東西南北」です。

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