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202042日()

東西南北

2019.9.19



 東京・JR上野駅の隣駅に鶯谷(うぐいすだに)駅がある。そこから歩いて5分ほどのところに、正岡子規(1867~1902年)が住んだ「子規庵」がある▼周辺にはその手のホテルが多く、初めて訪ねる人は戸惑うに違いない。数年前、周囲を気にしながら探し当てた家は、それらの建物にうずくまるようなこぢんまりとした平屋だった▼子規は肺結核、後に結核菌が骨に侵入する脊椎カリエスという死の病にとりつかれる。だが、病と闘いながらも、短歌・俳句の創作活動に取り組み、写生文の提唱という画期的業績を残している▼8年間住んだ子規庵では、最後は寝たきりとなる。6畳の書斎(寝間)からはガラス戸越しに小さな庭が見え、その小宇宙で「病床六尺」や「仰臥(ぎょうが)漫録」などの随筆も記した▼友人らがしばしば訪れ、句会などでは20人ほどが8畳の座敷も使ってあふれた。戦災で焼け、戦前のまま復元された家からは、小さいながらも今でも当時の熱気を感じる▼子規の世話は34歳で亡くなるまで、愛媛・松山から出てきた母の八重と妹の律がした。看護の様子は、想像を絶する。子規の偉業は母と妹があったからこそだった▼きょう19日は子規の命日。死の前日に庭の糸瓜(へちま)を詠んだ「糸瓜咲て痰(たん)のつまりし仏かな」の句などにちなみ、「糸瓜忌」とも呼ばれる▼子規の愛した庭は、今も四季折々の花が咲いている。上野まで行ったら、ぜひ足を延ばしてみたい。
2019年9月19日

東西南北

 

 大分合同新聞の顔とも言えるコラムです。朝刊1面に掲載。短い文章ですが、政治や世の中の動き、いま話題の事柄を鋭く、時に風刺の効いた、心温まる筆致で描きます。故事来歴などのうんちくも豊富。文章に親しみ、物事を考えるヒントにもなる。それが「東西南北」です。

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