<隠れた名盤>松原健之『ベストアルバム6』 北国、日本海、冬、悲恋…を美しく歌う

 05年のシングル『金沢望郷歌』からデビュー15年目となる男性の2年ぶりとなるベスト盤。アルバムが堅調に売れるという歌謡曲・演歌系の歌手では珍しいタイプだ。

 全16曲、帰らない愛に想いを馳せて絶唱する『花咲線』や『マリモの湖』、『北の冬薔薇(ふゆそうび)』など、“北国(or日本海)”、“冬”、“悲恋”をテーマにした楽曲がとても多いのは、“男性版・森昌子”といったところか。やはり彼の最大の持ち味が、美しく繊細な歌声ゆえの結果だろう。特に、旅立った恋人をじっと待つ女性の一途さを歌った『雪』は、弦楽器の演奏も相まって、切ない想いが胸にいつまでも残る。

 本作では、新録も4曲あり、その中でも特に『愛は不死鳥』と『G線上のアリア』が興味深い。『愛は~』は、布施明の大ヒット曲カバーだが、布施版が不死鳥の熱情に溢れているのに対し、松原版は誠実さを感じさせる。また、『G線上~』は、バッハの有名曲だが、彼の澄んだ優しい歌声はクラシックとも相性が良い。こうした可能性を引き伸ばすような作品にも大いに期待したい。個人的には、TUBEやサザンなどの夏の名曲を歌っても彼らしい夏景色が見える気もする。

 本作を聴けば、大自然の寒空の中でも、綺麗なものや人情を感じさせるものにより敏感になるはず。

(テイチク・2778円+税)=臼井孝

2019年10月23日

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聴く価値アリ!の1枚を、各ライターが紹介します。

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