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「サッカーコラム」お目当てのチームより目が行ってしまう。それが久保建英

J1大分―FC東京戦でも際だった存在感



 サッカーには、スタジアムで観戦することで感じ、理解できるものがある。もちろん、試合の中継映像を通じて見る試合にも、リプレーを始めとする利点がある。ただ、ボールがないところで選手が見せる動きを確認したいと思ったときは、やはり生観戦に勝るものはない。

 片野坂知宏監督率いるJ1大分。今年6シーズンぶりにトップデビジョンへ返り咲いたチームは、3年前はJ3に所属していたというから驚きだ。そればかりか、シーズンも半ばに差し掛かりつつある時点で上位争いを演じている。

 GK高木駿がDFラインに入り込むぐらいの高いポジションを取るなど、かなり独特な戦術を採用している―。そんな話はシーズン当初から耳に入っていた。ただ、これまでに関東圏へ来たのは鹿島と湘南の2試合。そのチャンスを見逃した多くの人々も、J1第14節が行われた6月1日の「味の素スタジアム(味スタ)」に足を運んでいたのだろう。

 対するFC東京にも、客を呼べる目玉がいた。6月4日に18歳の誕生日を迎えた久保建英だ。とはいえ、こちらは「見たい」ではなく「生でいつまで見られるか」に比重が移っているが…。久保を巡っては、ここのところ再び欧州に渡るという報道が続いているからだ。秋に開催されるラグビーのワールドカップ(W杯)の試合が本拠・味スタで行われる関係で、FC東京のホームゲームは前半戦に集中している。幸運なことに味スタへ足を運んでさえいれば、久保が急成長していく様を見ることが可能なのだ。技術、戦術眼を含めJリーグでは間違いなくトップレベルで、第14節終了時で首位を快走するチームの中心にふさわしい選手となった。

 注目の試合は、キックオフ直後に両チームがともに決定機を迎える展開で始まる。前半2分にFC東京はカウンターから久保のスルーパスをディエゴオリベイラがシュート。うまくコースを消したGK高木が、右足でこれをブロックした。対する大分も直後の4分、ビッグチャンスを迎える。左サイドを突破したオナイウがマイナスのクロス。星雄次がフリーで右足シュートを放ったが、こちらもGK林彰洋が見事にセーブした。

 「最初のチャンスを決めていれば…」。試合後にオナイウがそう悔やんでいたように、大分はこれを決められなかったことで消極的になった。サッカーでよくある「相手をリスペクトし過ぎた」状態だ。結果、前半のシュートは冒頭の1本のみに終わった。

 大分が攻撃の手を緩めた―。試合巧者のFC東京が、それを見逃すはずはなかった。前半30分には、右サイドで久保が戻したボールを右サイドバックの室屋成がダイレクトのクロス。「スペースというか空間に出した」という最高のラストパスを、飛び込んだ橋本拳人がヘディングで決めて先制点を奪った。

 追加点は同39分。左サイドでボールをカットした久保がドリブルで持ち込み左足シュートを放つ。DF鈴木義宜の股間を抜けたボールはGK高木の逆を突いてゴール左サイドに飛び込んだ。

 「最初から決めていました、自分で打つのを」

 ボールをインターセプトした瞬間に、久保はそう考えたという。長く取材をしているが、ここまではっきりと得点を狙うことを口にする日本人選手にはなかなか出会えない。その意味でメンタリティは「欧州規格」なのだろう。同時に、相手の股間を狙える判断力と技術を持っている日本人選手もまずいない。久保は今季リーグ戦で挙げた4得点のうち2点をそれで奪っている。DFはシュートコースを消してタックルに入るわけだから、股間を抜けば確実にボールはゴールに向かう。ただ、この技術と感覚を身に着けるのはかなり難しいだろう。それを18歳になったばかりの久保がいとも簡単にやってのけるのだから、感服するより他はない。

 後半に入り、同14分にオナイウが1点を返して1―2とした後は、見たいと思っていた大分のサッカーの一端を見られたのではないだろうか。終盤の流れを握っていたのは確実に大分だった。

 しかし、その良いリズムを一発で壊してしまう“特別な”選手がいる。このような選手と相対することになったチームはそれこそたまったものではない。この日の大分にとって、久保がそれだった。アディショナルタイムに入った直後の後半46分、左サイドで小塚和季からのスローインをティティパンが受ける。そこへ久保がプレスをかけたことでミスを誘発した。冒頭に記したように高い位置を取っていたGK高木へのパスが短くなるところをかっさらった久保は、冷静に高木をかわすと無人のゴールに丁寧にボールを送り込んだ。

 「たぶんロスタイムは5分ありましたし。あそこで点を取っていなかったら精神的にも苦しかったと思うんで、そういう意味では大きかった」

 試合直後にもかかわらず、内容を客観視できる冷静さ。プレー自体も驚きをもたらしてくれるが、精神的な成熟度も完全に大人だ。

 大分を見に行って、結局印象に残ったのは、またもや久保だった。静止状態にあるボールを持って仕掛けられる選手は、Jリーグでも希少。そう。チケット代の元を取れる、まれなる才能なのだ。今のうちに、生で見ておかれることをお薦めする。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はロシア大会で7大会目。

2019年6月6日

サッカーコラム

サッカージャーナリスト・岩崎龍一氏による詳細な分析です。

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