若緑色の新茶を収穫する原大樹さん=5月15日、別府市古賀原
【別府】別府市で唯一、茶の栽培から加工まで手がける「山本製茶」で、原大樹(たいき)さん(29)が祖父の残した畑を受け継ぎ、2期目の収穫シーズンを迎えた。中学生の頃に作業を手伝ったことはあったものの、茶生産はほぼ未経験。昨年は台風被害に見舞われた。苦難を乗り越え、周囲に支えられながら奮闘する。
山本製茶は市南部の山あいの古賀原地区で1965年に創業。市によると、市内で茶栽培を続けるのは同社を含めて2軒しかない。約1・5ヘクタールの畑に「やぶきた」や「さえみどり」など6品種を育てる。
母方の祖父で創業者の山本一郎さんは2023年6月に86歳で亡くなった。職人気質で県茶業協会長を務めたこともある。病と闘いながら直前まで、製茶工場で出荷作業を続けていたという。
原さんは高校卒業後、市内で会社員をしていた。祖父が亡くなった後、実家を訪ねるたびに荒れていく土地に胸を痛めた。「茶畑を守りたい」との思いが募り、転身を決意。昨年4月に同社の代表に就いた。
初年は散々だった。収穫量はかつての半分ほど。8月の台風10号では、山から大量の水が工場に流れ込み、機械が浸水した。
廃業が頭によぎった。「若いうちは失敗していい」。両親からの励ましの援助金と市の補助金を活用し、加工設備を復旧させた。
仕切り直しとなった今期は5月中旬から茶摘みを始めた。新芽の若緑が映える畑を前に、摘採機に乗った原さんはうれしそう。「出荷量は例年よりわずかに減少するが、状態はいい」とうなずいた。
祖父と一緒に草取りや肥料まきをしたことはあったが、製茶の仕方などを教えてもらったことはない。市外の同業者にアドバイスを受けながら、技術を日々磨いているという。
目下の夢は、別府のお茶を多くの人に知ってもらうこと。「若葉につやが出るのを見ると楽しくなる。自分なりのお茶を確立したい」と話した。