大分県内ニュース
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職人「強く、美しく」【切り拓け おおいた新時代】

第4部 芝との闘い

 選手の踏ん張りに負けない強さと、青々とした美しさを―。9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会に向け、県内の関連施設ではピッチの調整が進んでいる。情熱を持って芝を手入れするのは、それぞれのグラウンドキーパーだ。

〇昭和電工ドーム大分(大分市横尾)
 新たな挑戦、楽しみに 平田修さん(42)=別府市浜脇

 サッカーJ1の試合を終えたドームのピッチで、静かに腰を落とした。めくれた芝を元に戻し、削れた部分に補修用の砂を流し込む。手つきは早い。いわく「裏方の裏方です」。
 2001年春、ドームの完成に合わせてピッチの整備スタッフになった。県内では例がないハイレベルな芝の競技場は未知の領域だった。専門知識を持った先輩に教えを請い、見よう見まねで技術を覚え、ノウハウを積み上げていった。
 その年の夏、約3万8千人が入ったサッカー日本代表戦の記憶は鮮明だ。きれいに芝目がそろうようにピッチを刈り上げ、ゴールの設置やライン引きも手掛けた。大観衆の視線が注がれる興奮が体中に満ちた。
 W杯はハイブリッド芝(天然、人工の混合芝)で迎える。プレッシャーがのしかかるが「こんな経験は二度とできない」。新しい挑戦を楽しみにしている。

〇豊後企画大分駄原球技場(大分市新春日町)
 半世紀の経験に自信 馬場博信さん(71)=大分市高江北

 競技用の芝管理に携わって約半世紀。W杯を迎えるのは2002年サッカー日韓大会に次いで2度目だ。「職人冥利(みょうり)に尽きるね」
 球技場は水はけが良く、乾きが早い。空気の乾燥を絶えず気に掛け、根の周辺の水分量を慎重に見極める。「手を加えるだけ応えてくれる」。約1万平方メートルのピッチに水をまく作業も苦にならない。
 23歳でゴルフ場に就職し、繊細な調整が求められるグリーンを担当した。現在、芝刈り機の販売・修理会社を営む。
 02年W杯では、練習場になる可能性があった大分市営陸上競技場を管理した。利用は見送られたが、大会前に日本代表のフィリップ・トルシエ監督(当時)が「とても良い」と評したことは大きな財産になっている。
 自慢のピッチはW杯の公認キャンプで使用される。「自信はあります」

〇別府市実相寺多目的グラウンド(同市実相寺)
 一流選手絶賛の手腕 森田誠さん(57)=広島市安芸区

 鶴見おろしの風が吹く。日当たりもいい。「芝の健康を保つ条件がそろっている」。現地スタッフからの報告書や写真に目を通し、気象データを加味して水と肥料の与え方を変える。
 試行錯誤の末、スクラムに耐える強度と抜群のクッション性を兼ねるバランスにたどり着いた。仕上がりはトップ選手が絶賛する。
 W杯で万全のコンディションを提供することが使命だ。夏と冬の品種が切り替わる秋は、芝に衰えが出る時季でもある。通常より冬芝の種を早くまくなど、経験から対策をひねり出す。
 普段は広島カープの本拠地マツダスタジアム(広島市)の芝を管理する。刈り込み方が勝敗をも左右する繊細なプロ野球の舞台で、責任者を任されている。
 芝と向き合って35年。「まだ勉強したいことはたくさんある」。謙虚に理想を追い求める職人は、公認キャンプが待ち遠しい。
※この記事は、4月24日大分合同新聞朝刊19ページに掲載されています。

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