大分県内の優れた木造住宅や木造施設を表彰する「豊の国木造建築賞」が今年、四半世紀の節目に当たる25回目を迎えた。近年、木材の風合いが再評価されるとともに、バリアフリー化や環境への配慮など建物自体の機能も進化している。賞の歩みと変遷をたどった。
住み手を第一に
「いつ来てもここは気持ちいいですね」。昨年の最優秀賞に選ばれた岡本安功さん(59)=大分市=の住まい。設計者の石井鏡成(きょうなり)・石井建築研究所社長(57)はあらためて建物の心地よさを口にした。古い木肌が生む落ち着いた雰囲気。穏やかな風が家の中を吹き抜けた。
もともとは府内藩の筆頭家老だった岡本家が明治期の1898年から住んでいた家。増改築を繰り返した上に老朽化し、2008年、趣を生かしつつ現代の生活に合った住宅として再生した。「(柱やはりなど)本体はほとんど傷んでいなかった。建ててから100年後でも改築できるのが木造の良さ」と石井社長。
この賞は設計者や施工者はもちろん「住み手の努力なしに良い住宅は誕生しない」との理念から第一に建築主(住人)を表彰する。岡本さんの妻典子さん(60)は「ハウスメーカーで家を建て直すことも考えたが、この家を残すと決めて良かった。(家の)全部が気に入っている」と喜んだ。
受賞対象広げる
賞は県や建築、林業関係団体でつくる県木造住宅等推進協議会が主催。1986年に木造住宅賞として始まり、第12回の97年から対象を広げた。住宅以外で初の最優秀賞は第16回(2001年)の白丹交流センター(竹田市)で、太陽熱利用やバリアフリー化も評価。また、第20回(05年)の優秀賞で日田杉を多用した道の駅水辺の郷(さと)おおやま(日田市)など、大型の木造建築も出てきた。
「この25年間で、古建築の活用や住宅のバリアフリー化、大型施設や高齢者施設の木造化が進んだ」と第1回から選考委員長を務める片岡正喜大分大学名誉教授(74)。背景には大量生産・大量消費からの転換や、高齢化社会の進行、地域の特色を出すための地元材の活用などがあるという。
「時代の流れと建築は関連している」と片岡委員長。今後の課題は「次の木造建築をどう見いだすか。金がなくても工夫して良い住宅を建てました、という若い人をもっと評価することも必要だろう」と話した。
今年は55点の応募があり、25日に表彰式がある。受賞作品から木造建築の今と未来がどう見えてくるのか注目したい。 (報道部・小林大輔)
<メモ> 建築着工統計によると、県内の木造住宅の着工数はこの25年間、1996年の6596戸をピークに4千~6千戸台で推移。昨年は景気悪化で3908戸にとどまった。柱とはりで構造を造る在来工法(軸組み工法)のほか、欧米流のツーバイフォー(壁組み工法)、既製の建材を組み立てるプレハブ工法がある。
[PR]セントラル短資FX
※無断転載を禁じます。 当ホームページに掲載の記事、写真等の著作権は大分合同新聞社または、情報提供した各新聞社に帰属します。
![]()