
万全を期すため、豊後大野市役所の駐車場には消石灰がまかれていた=17日
口蹄(こうてい)疫の感染阻止を目的に、豊後大野市がすべての公共施設で、口蹄疫が発生した地域の団体の利用を一部制限する方針を決めた。「当然だ」「行き過ぎだ」。市の対応は思わぬ波紋を広げた。ウイルスという“見えざる敵”にどう立ち向かうか―。畜産が盛んな自治体が下した決断は、現場が抱える苦悩を浮き彫りにする。
「宮崎県民を差別するのはやめて」「自分の町だけが良ければいいのか」。マスコミ報道を受け、同市役所には17日、市の対応を批判する約20件の電話・メールが相次いだ。
政府内からも疑問の声。現地対策本部の篠原孝農林水産副大臣は「風評被害の典型的な例。消毒とかの協力をするのが大事であり、行き過ぎだ」と述べた。
同日夜、会見した橋本祐輔市長は「私たちの意図が伝わらず、宮崎県民、関係者に迷惑を掛けたとしたら申し訳ない」としながらも、「現場を預かる者として、感染の可能性を少しでも減らしたい」と訴えた。
同市は、市内の文化ホールなど約100施設について、口蹄疫発生地域の団体から利用申請があった場合、状況によっては利用を制限する方針。期限は被害が収まるまで、という。
341の畜産農家が牛約5300頭、豚約7300頭を飼育する同市では、宮崎県に通じる国道326号が南北を貫く。「感染ルートが分からない以上、車両消毒だけでは安心できない」。発生地が60キロ南の宮崎県日向市まで北進して以降、市は特に警戒を強めていた。
口蹄疫をめぐっては、ウイルスが車や靴、衣服などに付着、市民が「運び屋」になる恐れがあり、イベントの中止・自粛が相次いでいる。豊後大野市内で畜産を営む男性は「畜産農家にとって死活問題。それだけ状況は深刻であり、市の判断は当然だ」と話す。
同市が施設利用を制限するきっかけとなったのは、宮崎県内のチームも参加する中学生硬式野球大会。同じく会場の一つに選ばれた竹田市は17日、「万全の対策を取る観点から、主催者に別の会場を探すよう求めた」。畜産が盛んで県境に位置しており「不特定多数が集まるイベントなどは口蹄疫問題が終息するまでは、基本的に延期を求める」としている。
「やむを得ぬ判断」 岡本嘉六・鹿児島大学農学部教授(獣医衛生学)の話
口蹄疫ウイルスが感染した大半の事例は人と物の移動によると考えられる。豊後大野市と日向市の距離であれば、感染の危険性も考えねばならないだろう。市の判断は、やむを得ないのではないか。
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