有害鳥獣による農作物の被害が目立つ中、佐伯市の鶴見半島には昔築かれた「シシ垣」と呼ばれる防御壁が残っている。イノシシ被害に悩まされ続けた歴史を示す遺物だ。稜線(りょうせん)に延々と続く石積みを鶴見版“万里の長城”と例える人も。リアス式海岸の風光明媚(めいび)な景観にも恵まれた九州最東端の地でもある。「豊かな自然環境と先人が残したシシ垣を生かしたまちづくりをしたい」と新たな取り組みが始まっている。
シシ垣を探索する「シシ垣探検トレッキング」が28日、佐伯市の鶴見半島で開かれた。市内外から参加した12人と一緒に、半島の尾根伝いに残るシシ垣を見ながら約2時間かけて歩いた。
コースは鶴御崎灯台のある鶴御崎園地から間越のひょっとん峠までの約6キロ。昨年10月から地元ボランティアなどが荒れていた散策路の再整備を進め、3月中旬に完了したばかり。
中山間地を中心に目立つイノシシによる被害は、海辺の地域でも深刻さを増している。スタート地点の芝生広場では、無造作に掘り起こされた地面が目に付く。
ガイドを務めたボランティア団体「鶴亀屋」事務局長の肥後四々郎さん(67)は「イノシシが一晩のうちにミミズ探しをした跡。一番困っている。被害は身近な場所で起きている」と肩を落とす。
歩き始めて十数分後、シシ垣が姿を現す。連なる様は城壁を思わせる。石組みの緻密(ちみつ)さに「工事を終えたころには立派な石工職人が育ったと言われている」と肥後さん。
先人の努力の結晶である石垣は平たんな場所だけでなく、急な斜面にも残る。参加者の女性は「築くのは大変な作業だったはず。それだけ必要に迫られていたのだろう」と推し量った。
コースには鶴見、米水津の両地区の海岸を見渡せる絶景ポイントが点在。湾内に浮かぶ船や美しい海岸線、鶴見大島などが一望できる。時折漂う潮の香りと波の音に尾根にいながらも“海”を感じることができる。
参加者の一人、内田昇二市鶴見振興局長(56)は「今まで埋もれていた資源。このトレッキングを健康づくりと絡めたイベントに発展させたい」と期待する。
肥後さんは「海の人たちのなりわいがここには詰まっている。鳥のさえずりを聴きながらの散策を多くの人に楽しんでほしい」と話した。
埋もれていたシシ垣に関心が高まりつつある。これを機会に地域を見つめ直し、既存の観光資源とともに、魅力ある地域づくりにつなげてほしいと思った。
<ポイント>
シシ垣
イノシシやシカの耕地への侵入を防ぐ石垣。高さは1・8メートルほど。2メートルを超すものもある。鶴見や米水津、蒲江などで、江戸末期から設置。鶴見半島では、丹賀や梶寄地区の尾根まで続く段々畑を守るために、住民たちが集落を囲むように築いたという。
昭和30年代ごろになると、畑の放置とともに手入れがされず、雑木林に覆われて見えなくなった。半島には十数キロあるとみられる。蒲江の蒲江浦でも一部が見学できる。
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