
若手を指導する朝来野孝一警部補(右)。優しさの中にも厳しさがのぞく=大分中央署
若手の指導者として多くの後輩を育ててきたベテラン刑事が今月末、定年退職する。県警捜査1課の朝来野孝一警部補(60)。団塊世代の大量退職に伴い世代交代が進む県警では、豊富な経験を持つベテランの穴を埋める若手の捜査力アップが大きな課題だ。42年間、数々の事件に携わり、温厚な人柄で慕われる捜査のプロは「常に努力し、新たな時代の捜査官として県警を背負って立ってほしい」と後輩にエールを送る。
幼いころからテレビドラマの刑事にあこがれた。高校卒業後、1968年に県警入り。刑事一筋で、殺人、強盗、窃盗など幾多の現場を経験。事件を解決した達成感も、未解決で時効を迎えた悔しさも味わった。
「凡人だが、刑事の仕事が好きだからやってこれた」。得意分野は取り調べで「容疑者は百人百態だが、素直な気持ちで臨めば、対峙(たいじ)する相手の内面が見え、真実も分かる」と語る。
6年前からは捜査1課の刑事研修(通称・刑事学校)指導係を務めた。刑事学校は83年、将来の捜査幹部を育てようと県警が全国に先駆けて設置したもので、20~30代前半から選抜された捜査員が1年間、法令知識や事件指揮要領などを習得。朝来野警部補が送り出したのは毎年6人ずつの計36人に上る。
「若者の気持ちを理解し、能力に応じた指導を心掛けた。研修生の斬新な考えにハッとさせられることもよくあった」という。
第一線で活躍する教え子からは度々、携帯電話に連絡が入る。「この事件は何罪を適用すればいいですか」といった相談から、「子どもができた」「異動しました」との近況報告も。
「『刑事は調べができて、情報が取れて、適切な書類が作成できて一人前』『自分が率先して動けば、周りも力を貸してくれ、1人で越えられない壁も越えられる』と教わった。優しい中にも厳しさがのぞき、仕事を離れると父親のような存在だった」と元研修生。
裁判員制度の導入などで捜査をめぐる環境は変わりつつある。「捜査員自身も変わらないといけない。後輩には、わたしたちの世代が構築した手法を土台に勉強を重ねて成長してほしい」と願っている。
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