
伝統的工芸品産業功労者褒賞を受けた竹本英彦さん。90歳を過ぎた今も作業台に向かう
別府市の伝統工芸・つげ細工に70年以上取り組む「成美屋(なるみや)つげ本舗」(同市山家)の竹本英彦さん(91)が、本年度の「伝統的工芸品産業功労者褒賞」を受けた。竹本さんは機械ではできない透かし彫りなどの技術を守り続けており、「つげ細工に携わってきて良かった。もっといい作品を作りたい」と張り切っている。
同賞は伝統的工芸品産業振興協会(東京都)が、伝統的工芸品などの技術向上や後継者育成で長年、指導的役割を果たした人に贈るもので、本年度は全国で57人が受賞。県内からは竹本さん1人だった。
竹本さんの代表的な作品は、手のこによる繊細な透かし彫りのつげぐし。日本の文様などを参考にした緻密(ちみつ)なザデインで、1枚の板を彫り抜くため寸分の狂いも許されない。
成美屋は大正時代、伯父の成美さん(故人)が立ち上げ、化粧品やくしなどを販売。その後、店の経営をつげ一本に絞った。2代目となる竹本さんは17歳の時からつげ細工を始めた。
全国各地の温泉地に購買力が集まっていた昭和20年代は、つげのブローチや帯留めなどが飛ぶように売れたという。だが、不景気などの影響で需要に陰りが見え始めた。竹本さんは十二支の作品、根付け、はし置き、茶さじなど新しいニーズに応える作品に挑戦し続けた。
これまで育てた弟子は10人以上。1970年代には別府つげ細工組合の前身である別府つげ細工工業組合の組合長を務め、業界の発展にも尽力した。
現在、仕事は次男で社長の雅男さん(58)にほとんど任せているが、透かし彫りの技術を伝えようとアドバイスを続ける。「ここまで細かい透かし彫りができるのは、市内ではもう自分くらいしか残っていない。客が『竹本のくしが欲しい』と指名してくれたときが一番幸せ」と話している。
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