
ジュニアオーケストラを指導する篠崎史紀芸術監督(右)=いいちこリハーサル室
いいちこ総合文化センター(大分市)の地下練習場にモーツァルト「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」が流れる。演奏しているのは昨年結成した「いいちこグランシアタ・ジュニアオーケストラ」のメンバー。小学生から大学生まで100人近い団員が4月3日の第1回定期演奏会に向け、練習に励んでいる。
10周年記念し誕生
このジュニアオケ構想は、大分県文化スポーツ振興財団が2007年に始めた「MAROプロジェクトコンサート」が発端。「MARO…」はNHK交響楽団第1コンサートマスターの篠崎史紀さん(バイオリン)に若手演奏家を育成してもらう事業で、参加者に大きな刺激を与えている。「県の芸術文化を担う人づくりにさらに力を入れたい」と、財団が篠崎さんを芸術監督に迎えて09年、いいちこ総合文化センター10周年を記念したこのジュニアオーケストラが誕生した。
思いやる心を学ぶ
篠崎芸術監督をはじめN響メンバー14人が直接、指導するという極めてハイレベルで貴重な場。N響メンバーとともに指導する地元演奏家13人も県内の“えりすぐり”だが、篠崎さんは「プロを目指す場ではない。人間として成長していく場を与えているだけ」ときっぱり。「自分のベストを尽くし、少しでもステップアップし、満足感、達成感を得てくれればいい」
音楽監督の川瀬麻由美さん(バイオリン、県立芸術文化短大准教授)も技術より“気持ち”を重視している。「子どもたちが学んでいるのは音楽だけではない。仲間のことを気にしないとアンサンブルはできない。協調性、相手を思いやることを自然と意識し始めている」とオーケストラの“効用”を強調する。
県外から熱い視線
月2回の練習には大分、別府、日田、中津、佐伯市など県内各地から団員が集まる。同じところを何度も繰り返して練習する時もあるが、団員の表情は明るい。川瀬さんは「同じ目的で集まる友達がいることは幸せだと思う。将来への大きな財産になる」と指導に力を入れている。
県内では、1998年から別府アルゲリッチ音楽祭が「はぐくむ」を主テーマにして注目されているが、このジュニアオーケストラも「芸術文化による人づくり」として県外から熱い視線を浴びつつある。
日本の“西洋音楽発祥の地”大分で新たな音楽文化を担う子どもたち。県民を挙げた支援、協力が必要だ。それにはまず「聴く」ことから始めてほしい。
(文化科学部・岩本聡)
<ポイント>
いいちこグランシアタ・ジュニアオーケストラ 2009年4月に発足。現在、オーディションをパスした小学3年から大学1年まで団員95人(女性76人、男性19人)が活動中。管・弦・打楽器がそろった本格的ジュニアオーケストラは県内では初めて。全国には公立、私立合わせて100以上のジュニアオーケストラが活動中とされているが、大分のように練習、発表の場所が用意されたホール付きのオーケストラはまだ珍しい。オーディションは随時開かれている。
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