
県内で初の裁判員裁判の判決言い渡しがあった大分地裁=16日午後、大分市荷揚町
大分地裁で16日まで開かれた県内初の裁判員裁判。裁判員経験者は「裁判の内容は分かりやすかった」「市民感覚で発言できた」と感想を述べた。「もう一度やるのは遠慮したい」との声もあり、裁判員の負担は小さくはないが、市民が法壇に座ることで刑事裁判は格段に分かりやすく、身近な存在になったことは間違いない。
最も変化したのは、検察官と弁護人の主張、立証だった。論告で検察官は原稿を持たず、身ぶり手ぶりを交え、「被害者の苦しみを、ぜひ想像してみてください」と裁判員に訴えかけた。ほかの地検の例を参考に、担当した検事3人でリハーサルをしたという。この“組織的”な準備は「胸に迫るものがあった」と裁判員から高く評価された。
一方の弁護人。しっかりと練り上げた検察側ほどの表現力はなかったが、事件の概要を平易な言葉で説明し、被告を「さん」付けで呼ぶなど随所に工夫が見られた。
弁論では「重い刑罰だけで治安は守れない。刑罰は復讐(ふくしゅう)でもなければ、ばち(罰)でもない。被告に納得させ、更生を誓わせなければならない」と詳しく解説。具体的な量刑も述べ、裁判員が考えやすいよう配慮していた。
判決文も「法を守ろうとする意識」など簡単な言葉に言い換えた部分が見られた。しかし、「被害者にも一定の非があったことを否定できない」「動機において酌むべき点がないとは言えない」など“独特”の言い回しはこれまで通りだった。これから裁判員になる可能性のある市民には、敷居の高さを感じさせたのではないだろうか。
判決後、検察側、弁護側とも記者会見に臨み、裁判を総括した。裁判員を経験した臼杵市の会社員藍沢郁さん(50)は「少しでもみんなに声を伝えたい」と、実名を出して約2時間の会見に応じ、貴重な経験の一端を語った。
一方、裁判員制度の旗振り役であるはずの裁判所の宮本孝文裁判長は「評議を尽くすことができた」など、わずか50字ほどのコメントを出しただけ。「開かれた司法」を根付かせるためには、法曹関係者の積極的な情報発信は欠かせない。刑事裁判の新たな一歩を、市民に広く理解してもらうため、裁判所も意識改革が必要ではないだろうか。
<メモ>
県内初の裁判員裁判 対象は宇佐市安心院町の殺人事件。13日に選任手続きを実施。14~16日に公判。知人男性を刺殺したとして、殺人などの罪に問われた同町下毛、無職今戸勝利被告(45)に対し、検察側が懲役16年を求刑、弁護側が懲役10年を主張。宮本孝文裁判長は今戸被告に懲役14年を言い渡した。
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