「緊張の連続だったが、ようやくほっとした」。大分地裁で開かれた県内初の裁判員裁判最終日の16日、裁判員を経験した男女6人全員が判決言い渡し後に記者会見に応じた。会社員や主婦が市民目線で審理に臨んだ3日間。人を裁く重圧から解放され「責任ある仕事をやり遂げた気持ち」と語った。一方で「もう遠慮したい」と本音ものぞかせ、重大事件の内容によっては「市民には負担。参加するには無理がある」との指摘も出た。
「一番緊張したのは判決を言い渡す前。ドキドキした」。男性会社員(54)は大役を終え、安堵(あんど)の表情を浮かべた。6人が裁判員に選任されたのは13日午前。翌日から法壇に座った。全国の裁判員裁判では、午前中に選任手続きをした後、午後からすぐに公判が始まるケースがほとんど。大分では日程が一日延びた形だが、「明日から頑張ろう、という時間が持てた」などと評価する声が多数を占めた。
ただ「公判初日は昼休みになってから、かなり疲れた。あと10分くらい休みがほしいなと思った」と配慮を求める意見も出た。
審理では検察官、弁護人がそれぞれ大型モニターに資料を映し出し、平易な言葉を使って立証を展開した。「イメージするのに分かりやすかった」と50代女性。「特に検察官が(論告で)身ぶり手ぶりで語り掛けてくれ、心に響くものがあった」との感想もあった。
殺害に使われた凶器や、被害者の傷口の写真を直視したが、臼杵市の会社員藍沢郁さん(50)は「ショックでした。普段の生活ではあり得ないですから」。
被告人質問では、全員が被告に率直な疑問を尋ねた。「追及するより『真実を知りたい』と問い掛けた」と50代女性。由布市の30代主婦は、被害者遺族の訴えに「涙をこらえるのに必死だった」と振り返った。
評議で量刑を決めるに当たっては「検察側の懲役16年、弁護側の10年という主張を聞き、自分の感覚で考えた」と藍沢さん。判決言い渡しの際、じっと被告を見詰めた大分市の会社員松浦博文さん(53)は「判決はわれわれの気持ちを率直に出した結果。被告は自分を見詰め、社会に出てやり直してほしい」と語った。
一方、「もう一度裁判員に選ばれたいか」との質問には「もう遠慮したい」「今回で許して」との声も。死刑判決が想定されるような重大事件や、被告が犯行を否認するような事件に市民が携わるのは「負担」「知識のある人でないと無理。(裁判員の参加は)ある程度、抑制した部分でなければ」との意見が続いた。
遺族、被告に賠償請求
公判は九州の裁判員裁判では初となる被害者参加制度が適用された。判決後、参加した被害男性の母親(51)は委託した清水立茂弁護士を通し「今戸(被告)が何年間か刑務所に入っても、ヤス(息子)は戻ってこない。人を殺しても、こんなに軽い刑だと、殺人が増えるのではないですか」とコメントを出した。
一方、清水弁護士は「判決では、被告の言い分を『すべてを信用することはできない』としている。ある程度、遺族の主張も受け入れられた」と評価した。
母親は事件の被告に損害賠償を求める「付帯私訴制度」を利用し、今戸被告に慰謝料や逸失利益など約3700万円の支払いを命じるよう同地裁に申し立てている。判決後、3人の裁判官が第1回の審理を開いた。付帯私訴制度は、昨年12月に被害者参加制度と同時にスタート。裁判所の決定を不服として、被害者側か被告が異議を申し立てれば、通常の民事訴訟に移行する。
裁判長「評議尽くせた」
県内初の裁判員裁判を終えた宮本孝文裁判長は、「評議を尽くすことができたと思う。裁判員、そして補充裁判員の皆さまのご協力に心より感謝を申し上げたい」とのコメントを出した。
(お断り)裁判員法は(1)裁判員や補充裁判員の氏名、住所その他個人を特定するに足りる情報は公にしてはならない(2)その経験者については、本人の同意がある場合を除き、同様とする―と定めています。その趣旨を踏まえ、大分地裁の裁判員裁判では、審理段階は個人が特定できる情報の報道を控えてきました。判決後は裁判員経験者6人が公表に同意した範囲で報じます。
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