
県内で初めての裁判員裁判が行われ、判決が言い渡された大分地裁第1号法廷=16日午後、大分市荷揚町(代表撮影)
大分県内で初の裁判員裁判となった宇佐市安心院町の殺人事件の第3回公判が16日、大分地裁であり、殺人などの罪に問われた同町下毛、無職今戸勝利被告(45)に、宮本孝文裁判長は懲役14年(求刑・懲役16年)を言い渡した。判決後、裁判員を務めた6人の男女全員が記者会見に出席し「ほっとした」「達成感がある」「疲れた」と、重責を担った感想を語った。
出席した男性は「評議ではみんなが市民感覚で発言できた。判決ではわたしたちの気持ちが出た」と振り返り、被告に対し「立派に更生してほしい」とメッセージを送る女性もいた。
一方で「職場を休んで、迷惑を掛けた」「(生々しい殺害現場の)写真を見てびっくりした」と負担を訴える意見も出た。
裁判は、事件に至る経過の中で「被害者に落ち度があったか」が争点となった。判決理由で、宮本裁判長は、弁護側の「被告は被害者から飲食代などの支払いを負担させられ、逃げることもできず絶望していた」との主張を「すべてを信用することはできないが、虚偽であると断じることもできない」とした。
「犯行の経過には被害者にも一定の非があった」とし「被害者に(殺害される)落ち度があったとまでは言えないが、動機に酌むべき点はある」と述べた。
その上で「被害者は当時24歳。若者の命と将来を奪った結果は重大。遺族の受けた衝撃、悲嘆は察するに余りある。手加減せずに(ナイフで)突き刺した犯行は悪質だ」と非難した。
判決によると、今戸被告は5月28日午前4時ごろ、自宅近くの不倫関係にあった女性宅で、女性の横にいた知り合いの枳●(木ヘンに貝)(けんのき)康さんを見て、嫉妬(しっと)心から激しく怒り、枳●(木ヘンに貝)さんの首や背中を、持ってきた両刃のナイフで数回、刺して殺害した。
負担の軽減十分な審理課題浮き彫り
◆解説◆市民が出した結論は懲役14年だった。判決後、懲役16年を求刑した検察側は「おおむね理解を得られた」とコメント。懲役10年を主張した弁護側も「不満がある訳ではない」と、市民を交えた量刑判断には一定の評価を示した。
ただ、判決理由では背景事情の認定を、あいまいにとどめた部分が多かった。最大の争点だった、被害者側の落ち度を主張した弁護側の言い分は「すべて信用することはできないが、虚偽であると断じることもできない」と判断を避けた。
さらに、被告がちぐはぐな供述をした殺意の発生時期は「自宅にナイフを取りに行った時点だったかは疑問が残る」として踏み込まなかった。
これらは、背景事情を裏付ける間接証拠が少なかったことが一因だろう。事件には複雑な人間関係が絡み合っていたが、限られた審理日程では、背景事情を語る関係者の証言は必要最小限にとどめられた。
分かりやすさだけを目指し、事件の詳しい事実認定がおろそかになってはならない。今回の裁判は「市民負担の軽減」と「十分な審理」という裁判員制度の持つ大きな課題をあらためて浮き彫りにした。
(社会部・乙●(口ヘンに羊)啓太郎)
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