公金横領など懲戒免職処分とする職員の不祥事は原則として告発し、氏名を公表する―。県内で公務員の不祥事が相次ぐ中、別府市が処分に関する指針・公開基準を見直した。組織としてより厳しい姿勢を示した形だが、各市町村の受け止め方はさまざま。県内で初めて「告発」を明文化した新たな一歩は今後、どんな波紋を広げるのだろうか。
既に社会的制裁
「問題提起と受け止める」「いずれはそういう方向に進んでいくのかもしれない」「現在のところ告発までは考えていない」
別府市の新規定に対し、各市町村の担当者はこう話す。
ほとんどの自治体が職員の懲戒処分について独自の基準や指針を設けており、氏名公表については7市町が先行。だが、告発についてはどこも触れていない。職員の交通事故が続いたことから、基準の見直しを進めている国東市は「検討課題にはなる」と考える。
別府市は8月の公金着服事件に関して、告発はしなかった。「損害が全額弁済されている」というのが理由。ほかの自治体もほとんどのケースで同様の判断。「本人は懲戒免職で身分を失っているし、お金が戻れば告発までしないだろう」「行政処分と刑事処分は別だが、社会的制裁を二重に受けさせるかどうか…」との考え方が多い。
「捜査機関が判断すべき問題を、行政の中で済ませてしまうのはおかしい」と感じる市民もいるが、大分大学の山崎栄一准教授(憲法、行政法)は「被害が弁償され、社会的制裁をすでに受けていれば、実質的に告訴は機能しないだろう」。これが専門家としての一般的見方だという。
倫理観の教育を
別府市は現在、市公金取扱事務管理委員会を設置して、事件の検証と再発防止策の検討を進めている。「身分を守られている一方で、公金を預かっている重い責任があることは、公務員という職業を選んだ時に分かっていたはず。原点に戻って当たり前のことを当たり前にしっかりやらなければ」と中尾薫総務部長。
「法と倫理」を研究する立命館アジア太平洋大の角田愛次郎教授(企業法務、企業倫理)は「人間は弱いものというところを出発点に考えればいい。告発だけでなく、働く倫理観を教育し、弱い気持ちを抑えるシステムや組織を整えてこそ再発が防止できる」と指摘する。
別府市の今回の不祥事への対応には、「なぜ告発しないのか」「なぜ氏名が非公表なのか」と市民から多くの声が寄せられた。各自治体も「近ごろの就職難の中、公務員への目は厳しくなるばかり」と風当たりの強さを感じている。
山崎准教授は「(1)組織ぐるみで隠してうやむやにしている(2)公務員だから処罰を重くすべきだ―が市民の考えだろう」と話す。
ただ、「大衆が感情的になって厳罰化し、血祭りに上げる『ペナルポピュリズム』の動きは警戒すべき」と指摘。「法の適用の平等という観点からいくと、『公務員だから』というのは厳罰化の理由にはならない」との見方も示す。
角田教授は「今の日本社会は非寛容になってきている。本人の社会復帰や更生への影響も考慮に入れなければ」と話している。
メモ
別府市は8月17日、公金約146万円を着服していたとして、市民課の男性主査の懲戒免職処分を発表した。今回の着服が、2007年に発覚した着服事件で別の職員を懲戒免職処分としてからわずか半年後に始まっていたことを重く受け止め、刑事事件に関する事案での「告発、氏名公表」の運用に至った。
「市職員の懲戒処分に関する指針」では、免職の対象となる具体例として公金または公物の横領や窃取、詐取などを挙げている。
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