県内唯一の聾(ろう)学校である県立聾学校(大分市東大道)が、校名の変更などをめぐって揺れている。県教委は聾学校に知的障害の高等部の併設を計画しており、来春から障害の名称とは関係のない校名に変更する方針。一方、高等部の生徒らは「伝統がある校名を守ろう」と、これまでに約5千人分の署名を集めた。保護者や卒業生は「考える会」をつくって「聾学校のまま存続を」と訴えている。
きっかけは学校教育法の改正に伴う特別支援学校の再編整備。県教委は2011年度から、聾学校に知的障害児を対象とした職業科の高等部新設を計画。まず、来春の校名変更を目指している。
「聾学校の児童、生徒は減少傾向なので、知的障害の高等部を新設すれば人数も増え、学校の活性化につながる。計画は既に議会で承認され、校名変更に必要な経費は本年度予算に組み込んでいる」と県教委。
だが、カリキュラムや施設整備などについては「来年度に決める」としているため、保護者らは「教育の中身や環境整備が後回しでは納得できない」と反発。
また、「手話で会話をする子どもにとって、聾学校は特別な場所」として、理解も求めている。聴覚に障害がある子どもはコミュニケーションの面で孤立しやすく、心を閉ざすケースが少なくない。ある保護者は「聾学校に入って子どもの笑顔が増えた。今の環境を維持してほしい」と訴える。
3歳から聾学校で学び、母校で教えている教員も「聾学校は音声言語を使えない子どもが社会へ巣立つ力を蓄える場でもある。教育環境を守ってほしい」と要望する。
聾学校の改称などの問題は各地で起きていて、「ろう教育のあすを考える連絡協議会」(東京都)が組織されている。河原雅浩事務局長は「(手話による授業など)教員は技術を高める時間が必要。異なる障害の教育を併設すると、ゆとりを失い教育力の低下が懸念される。また、国は障害の名称を含まない校名が望ましいとしているわけではない」と教育行政に疑問を投げ掛ける。
署名運動に取り組む生徒は「わたしたちは先輩が築いた聾学校の歴史と校風を守りたいのです」。
特別支援学校の再編計画 07年度の学校教育法の改正に伴い、県教委は08年度に特別支援学校の再編整備計画を策定。県内の養護学校15校は来年度から「○○特別支援学校」などに変わる。現在、障害の種類を校名にしているのは100年の歴史がある盲学校と聾学校だけ。県教委は、11年度に聾学校高等部の産業工芸科など3科の募集を停止し、聴覚障害対象の普通科と職業科、知的障害対象の職業科を新設する計画。聾学校には幼稚・小学・中学・高等の4部と専攻科があり、計58人が学んでいる。
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