
事故のあった船倉内で作業前に酸素濃度を測ったとする記録。日照港運によると、いずれも20.9%と記されている
大分市佐賀関の日鉱製錬佐賀関製錬所に停泊中の鉱石運搬船「シンガポールグレース号」の船倉内で作業員3人が酸欠死した事故で、作業員らが船倉内部の酸素濃度を十分に把握していなかった可能性が高いことが15日、大分労働局への取材で分かった。船倉の構造上、3人が倒れていたタラップ付近は空気の循環が悪く極度の低酸素状態だった恐れもあるが、同労働局は「その地点で測定をしたという報告は受けていない。濃度測定が欠けていた可能性もある」としている。
日照港運(大分市)によると、船倉は事故当日までの13日間、密閉された状態。積み荷の銅鉱石は酸化して船倉内の酸素濃度を低下させる危険性があった。
同社の説明では、酸素濃度測定は作業前、ハッチを開けて「数分」たってから行う。約10メートルのコードの先端に付いたセンサーを甲板から船倉内に垂らして測定するという。通常の空気中の酸素濃度は約21%。同社によると、事故があった船倉内6カ所で測定した酸素濃度はすべて20・9%で、別の船倉内の測定も6カ所すべてで20・9%で問題なかった、という記録が残っている。記録によると、測定者はいずれも作業主任者の幾嶋和仁さん(48)だった。
ただ、船倉を開閉するハッチの両端は、縦、横が3~4メートルほど張り出したひさし状の構造。タラップ付近はひさしの真下に当たり、「換気ができにくい場所」(同労働局)のため、低酸素状態だった恐れがある。
同労働局によると、酸欠状態の空気が停滞する場所を含めて測定する必要があるが、「ひさしの下部を測定したという報告は聞いていない」としている。旧労働省が編集した「酸素欠乏危険作業主任者」の講習者向けテキストは「酸素欠乏の空気が発生、または停滞する恐れがある場合、必ずこれらの場所を含み、垂直方向および水平方向にそれぞれ3点以上測定する必要がある」としている。
沈痛「話せる心境でない」幾嶋さんの通夜
日鉱製錬佐賀関製錬所での労災事故で死亡した日照港運の作業員3人のうち、幾嶋和仁さん(48)=大分市志生木=の通夜が14日夜、同市内の葬斎場でしめやかに営まれた。参列者は一様に沈痛な面持ちで幾嶋さんの冥福を祈った。
参列した女性は「遺影に『安らかに』と声を掛けました」、別の女性も「遺族には『頑張ってください』としか言えなかった」と言葉少なに話した。日照港運の関係者も憔悴(しょうすい)した表情。通夜終了後、「今は話せる心境ではありません」とうつむいたまま葬斎場を後にした。
日照港運によると、亡くなった3人の通夜・葬儀はいずれも遺族と同社が合同で行う。松金政広さん(63)=同市佐賀関=は同市内、単身赴任中だった森田憲治さん(52)は家族が住む北海道内で、それぞれ営まれる。
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