
広瀬勝貞知事と面談後に知事室から出てきた伊東竹彦九州乳業社長(右)=4日午前11時28分、県庁
「(人選については)随分考えた。通常の人材支援とは異なり、非常に厳しい環境下での再建を実現しなければならない」
4日午前、県庁で九州乳業(九乳)=大分市、県酪農協の代表らと面談した広瀬勝貞知事は、再建への道のりの厳しさについて触れ、支援する「覚悟」を示した。九乳の要請に応じ、県がバックアップを約束した瞬間だった。
県が新社長に推薦した江川清一氏(60)は、昨年末に退職した県OB。農林水産部審議監から国体局長となり、大分国体を成功に導いた。農政に明るく、幅広い人脈もある。九乳関係者らは「(再建へ)大きな一歩を踏み出せた」と、安堵(あんど)の表情を見せた。
株主の一角を占める県(出資比率は12・54%)は農林水産部長(旧農政部長)、担当課長の2人が歴代取締役を務め、経営に一定の関与をしてきた。だが、今回は九乳に直接出資はしない方針。「あくまで自主再建。税金を投入すべきかどうか、生乳を加工・販売する会社としてあるべき姿を考えた」と農林水産部。
一方、出資比率が54・8%の最大株主、県酪農協(出荷戸数198戸)は5月下旬の臨時総会で、2億円の新たな出資を決めた。これに関連して、乳価の低迷、飼料高などで経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)になった組合員に対し、出荷乳量に応じた負担金を求めるという。
こうした状況を踏まえ、県は6月県議会の補正予算案に、酪農家の経営を支援する事業費の計上を検討している。
県内の学校給食に出される牛乳の85%を供給している九乳は、県民に親しまれてきた。トキハインダストリー商品部は「消費者の“みどり”ブランドへの信頼は厚い。経営難が報じられた後も売れ行きに変化はない」。「息子2人はみどり牛乳を飲んで育った。何とか再建してほしい」と大分市内の50歳代の主婦。
もし、九乳の再建計画が頓挫して生乳を処理できなくなれば、他県の乳業会社の処理施設に委託しなければならなくなる。ある組合員は「輸送コストを考えると、今でさえ苦しい酪農家は耐えられない。県内に処理施設は不可欠」と強調。全国有数の規模を誇る本川牧場(日田市)の本川角重社長は「九乳には新しい販売・経営戦略が求められる。ピンチをチャンスに変えるような抜本改革に期待している」と望みを託した。
(経済部・安東公綱、大塚史穂、小林大輔、渡辺大祐)
搾れば搾るほど赤字 嘆きの酪農家
再建に向けた一歩を踏み出した九乳に出荷する側の酪農家も、経営実態は過去になく厳しい。
「農家はこの2年ほどで蓄えを吐き出した。赤字でも乳を搾らないと現金が回らない。従業員の生活を守るため、経営者はほとんどボランティア状態」。大分市内の50歳代の酪農経営者は窮状を語る。
この牧場では成牛約120頭を飼育しているが、原油や穀物価格が高騰した昨年は1千万円の赤字が出た。平均乳価の1キロ当たり89円に対し、生産コストは107円のときも。「搾れば搾るほど赤字状態」
県内では毎年20戸前後の酪農家が廃業。「不況で乳価の先行きが見えず、毎日不安。これから先も廃業者は増えるだろう」と日田市内の40歳代の酪農家が話せば、大分市内の40歳代の経営者は「牛乳は体にいいんだ。本当に飲んでもらいたいよ」と懇願した。
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