
講演する田尻部長
育てられなくなった赤ちゃんを匿名で預かる赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)を国内で初めて設置した慈恵病院(熊本市)の田尻由貴子看護部長が二十八日、大分市内のホテルで「いのちへの思い」をテーマに講演した。大分法人会青年部会(菊池一利部会長)の主催。県内から約百五十人が参加した。
慈恵病院は二〇〇七年五月、こうのとりのゆりかごの運用を始めた。〇八年三月までに十七人の赤ちゃんが預けられたことが公表されている。田尻部長は、幼い命が失われた事件が熊本県内で相次いで起きたことや性行為の低年齢化、若年層の人工中絶の増加など、設置に至る経緯や社会的背景を説明。「ゆりかごの設置で全国に命のメッセージを発信できた」と話した。
慈恵病院には、思いがけない妊娠に悩む全国の女性から相談が寄せられており、〇七年度だけで五百一件あった。うち七十五件は「ゆりかごに預けたい」「養子縁組したい」という内容。設置から丸二年たとうとしている今でも相談件数は依然として減らないという。「育児支援制度がいかに貧弱かが分かる。マンパワーが不足している公立機関には限界がある」とし、民間と行政の連携強化や、妊娠に悩む人たちのための相談業務の必要性を訴えた。
信頼関係築けば匿名でも名乗る
田尻看護部長は大分合同新聞のインタビューに応えた。ゆりかごの設置時に「匿名」の是非が問題になったことについて、「匿名にすることで相談しやすい状況ができ、行政だけでは救済できなかった命を救うことができた。最初は匿名であっても、信頼関係を築くうちに相談者は名乗ってくれることが多い。相手に寄り添い、共感することが大事」とした。
ゆりかごの意義に関しては「物理的な意味合いよりも、失われていく命があること、命をはぐくむことの意味を社会に伝えることができた。人は『ヒト』として生まれ、はぐくまれて『人間』になる。心を育てる育児をもっと推進していくべき」と話した。
[PR]セントラル短資FX
※無断転載を禁じます。 当ホームページに掲載の記事、写真等の著作権は大分合同新聞社または、情報提供した各新聞社に帰属します。
Copyright (c) 2008 OITA GODO SHIMBUNSHA