県教委が教員採用試験で不正採用を繰り返していた問題で、実際は不合格だったとして採用を取り消され、臨時講師となった男性(31)が二十六日、県を相手取り、取り消し処分の無効を求める行政訴訟を大分地裁に起こした。県教委汚職事件に絡んで、学校現場で働く臨時講師が提訴に踏み切ったのは初めて。
訴えなどによると、男性は二〇〇一年に大学卒業後、県内の公立学校で臨時講師などを務め、〇八年度教員採用試験に合格。同年四月、県内の中学校に教諭として採用されたが、八月下旬、県教委から点数データの改ざんによる不正合格だったと告げられた。辞職しなかったため、九月八日付で採用取り消しとなった。
男性側は「不正につながる口利きやわいろの授受とは全く関係ない。教員採用は選考試験であり、点数だけでなく、経験なども含めた評価によって採用された」として、処分は違法と主張している。
提訴について、広瀬勝貞知事は同日の記者会見の中で、記者の質問に答え「県教委は一人一人に事情を丹念に説明したと聞いている。県教委としても断腸の思いを伝えたはずだ。そういう意味では、何とか分かってもらいたいと思っている」と述べた。
小矢文則教育長は「提訴がなされたか確認できていないが、いずれにせよ訴状を見ていないので、コメントしようがない」とした。
処分の妥当性争点に
◆解説◆採用を取り消された臨時講師の男性(31)は突然失った教諭の職を取り戻すため県を訴え、長年、組織的に不正をしてきた“張本人”である県教委の一方的な処分に異議を唱えた。
提訴に至ったのは男性が初めてだが、大分市の臨時講師秦聖一郎さん(23)は既に提訴の意向を固めている。男性は「教諭に戻るため」に提訴したが、秦さんは「訴訟を通して不正採用の全容を解明したい」としている点で、趣旨は異なる。
その中で両者に共通するのは「不正採用につながる口利きやわいろの授受は一切ない」と主張している点。処分に絡み、口利き先を明らかにしないなど、不正の全体像を隠す県教委の姿勢が提訴の一因とも言える。
不正採用に絡む処分は当初から「不公平」と指摘があった。〇八年度試験では二十一人を不正採用と認定、六人の採用を取り消し、十五人が辞職した。一方、〇七年度は不正合格が疑われる教諭を処分せず、不正のあおりで不合格となったとみられる二十二人を再試験によって合格とした。
県教委は「〇七年度は〇八年度に比べデータの精度が低いため」と説明するが、そうであるなら〇七年度の対象者に“救済”だけを適用した根拠は不十分。“訴訟リスク”を低くする苦肉の策だったとも受け取れる。
データ改ざんの“実行役”だった元義務教育課参事(53)=収賄罪が確定=は公判の被告人質問で「両年度のデータ(の精度)に違いはない」と供述した。昨年十二月に初めて実名を明かした秦さんは「自分たちだけを見せしめに人生を奪われた」と強く訴えた。
行政訴訟では、行政側に立証責任が課される。教諭として歩み始めたばかりの〇八年度採用者だけを対象に、その前途を絶った処分は正しかったのか。県教委は法廷で妥当性を明らかにする責任がある。
[PR]セントラル短資FX
※無断転載を禁じます。 当ホームページに掲載の記事、写真等の著作権は大分合同新聞社または、情報提供した各新聞社に帰属します。
Copyright (c) 2008 OITA GODO SHIMBUNSHA