
事故があった南日本造船
建造中の船に架けていたタラップが落下し、作業員二十六人が死傷した大分市青崎、南日本造船大在工場の事故。同社は、タラップ先端のフックの耐荷重を把握しておらず、初めて斜めに架ける工法も工場責任者が知らなかったなど、ずさんな安全管理が次々と明るみに出ている。一方、労働安全衛生法にもタラップの強度計算などを義務付ける規定はなく、労災防止の“すき間”で起きた事故との見方もできる。事態を重視した厚生労働省は、再発防止を求める要請書を造船業界団体へ出した。
「重大な災害を発生させた。亡くなった方や遺族、けがをされた方に深くおわび申し上げます」。事故が起きた二十三日。記者会見した吉田泰社長らは苦渋の表情で謝罪と釈明に追われた。
同社の説明から、事故の要因として▼タラップの斜め架けに使うフックは設計図を作らず、製作した下請け会社にはボルトの強度など具体的な指示をしていなかった▼タラップと船体をワイヤで結ぶ強度補強をしなかった▼事故当日までタラップを渡るテストをしていなかった▼一度にタラップに乗れる人数を把握しておらず制限もしていなかった―などが浮上している。
同業の佐伯重工業(佐伯市)は、作業員が船に乗り込む際には櫓(やぐら)を立て、タラップは船へ水平に渡している。櫓には人数や重量制限を記した紙を張り、注意を呼び掛けているという。
ある業界関係者はタラップの斜め架けについて、「珍しい。櫓より簡単にできるからやったのでは。そうだとしても二重の安全対策を講じるべきだった」と指摘する。
厚生労働省などによると、船へ渡る桟橋(タラップ)に関して、法令には「丈夫な構造とする」とあるが、強度計算や使用する材料の指定は明文化されていない。「この分野で大きな事故が起きていないことが背景にある」(関係者)という。
同省は二十六日付で造船業界団体に再発防止の徹底を要請。「船へタラップを架ける場合は最大積載量に応じて接続ボルトなど使用材料や構造の強度計算を行う」「安全体制の整備」「タラップの点検」―などを求めた。法令改正について「原因が究明された後、必要に応じて検討したい」と同省は話す。
二十九日には、県警が業務上過失致死傷容疑で、南日本造船大在工場を家宅捜索する。同工場で働く五十代男性は「利益や効率を追求するばかりでは、現場で働く人間の安全は守れない」と厳しく批判している。
南日本造船大在工場の事故 23日午前9時半ごろ、同工場で建造中の自動車運搬船に架けたタラップが落下し、2人が死亡、24人が重軽傷を負った。タラップは長さ約30メートル、幅約1メートル、重さ約6トン。事故当時、タラップを船体に架けるクレーンの故障で作業開始が遅れ、タラップを渡した直後に、待機していた作業員が殺到したという。県警や大分労働局は、タラップを船体に架けるために取り付けていたフックのボルトが、重さに耐えられずに折れたことが落下の原因とみて捜査を進めている。
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