第一回アジア・太平洋水サミット一周年を記念した「水と食のフォーラム」が七日、別府市のビーコンプラザであり、東京大学生産技術研究所の沖大(たい)幹(かん)教授が「バーチャルウオーターから考える日本の水、世界の水」と題し講演。シンポジウム「水・食・環境」では九州大学大学院の島谷幸宏教授をコーディネーターに、県内のNPO法人の代表者や行政関係者ら五人が意見を交わした。要旨は次の通り。
沖教授の講演要旨
世界で安全な水を近くで十分確保できない人は少しずつ減ってはいるが、まだ十億人もいる。世界全体の必要量はあるもののインフラが未整備なため、誰もが水を手に入れられる仕組みができておらず、世界で水資源は偏在している。
日本は食料貿易を通じ、大量の仮想水(バーチャルウオーター)を使っている。そのほとんどは家畜が食べる餌。輸入先は圧倒的に米国、カナダ、オーストラリアに依存している。
海外で水が足りなくなれば食べ物が作れなくなる。水問題イコール食料問題。二十一世紀は水が戦略物質と言われるが、水が食料に形を変えて世界を回っている。世界の食料は増産されているが、貧しい国は水も食料も足りないままだ。
水資源は偏在しているが、水を直接運ぶことは難しい。仮想水の概念は水資源がどう世界で配分されているかを考える有力な手段となる。世界の仮想水収支を見ると、気候的に水が少ないけれど経済的に豊かな地域が“輸入”によって必要量を満たしていたり、“輸出”できている国が限られていることが分かる。
日本は世界の水に支えられており、日本の製品を海外が買ってくれるおかげで食料を買うことができる。日本だけの繁栄はあり得ない。
世界の水問題解決に貢献するため、日本は災害や環境悪化に対応するための知恵や経験を世界に伝えていくことが求められる。
シンポ 水質も大切/棚田を研究の場に
▽諌本憲司氏(NPO法人ひた水環境ネットワークセンター理事長)
ダムの発電で水の量が減り、大山川にアユがいなくなった。交渉で川の水量を増やし大きなアユは帰ってきたが、香りが良くない。ミネラルなどが豊富な「力のある水」になれば本物のアユが増える。水は量だけでなく質も大きな問題だ。
▽桑野和泉氏(ツーリズムおおいた会長)
湯布院では田でクレソンを作っている。クレソンは本当にきれいな水のある土地でしか育たない。その背景を考え、子どもに水の重要性を伝えていくことが大切。大人と子どもが一緒に読める教材があるといい。
▽後藤幸彦氏(棚田里山景観研究所主宰)
棚田でコメを作っており、景観を生かした農業を心掛けている。作業のほとんどを立命館アジア太平洋大学の学生に手伝ってもらっている。源流域にも行ければ、水環境や農山村の苦労も分かる。研究の場として使ってもらいたい。
▽清水嘉彦氏(由布市副市長)
昔の人は水の持つエネルギーを上手に活用してきた。排水を屋根にまけば涼しくなるし、毛細血管のように張り巡らされた水路の途中に水が少したまる場所を設け、消火栓の代わりにしている。先人の知恵に倣い水の可能性を引き出す試みが大切だ。
▽加藤正明氏(県農村整備課主幹)
農村に行くと、何百年も前から水路をきちんと管理してきたことが分かる。田に入った水は75%が再び川に戻る。さらに20%は地下に吸収される。水路や田を守ることは安全な農産物のためだけではなく、水そのものを守ることにもなる。
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