県教委汚職事件で、大分地裁が三十日に浅利幾美被告=贈賄罪=に言い渡した判決の要旨は次の通り。
【主文】
被告を懲役一年二月に処する。この裁判が確定した日から三年間、その刑の執行を猶予する。
【罪となるべき事実】
被告は二〇〇八年度県公立学校教員採用試験の受験生の母親である。江藤勝由被告は(同試験が実施された)〇七年度、県教委義務教育課人事班課長補佐として、市町村立学校教員の採用試験の実施と、試験による採用候補者の決定に関する職務に従事していた。矢野哲郎被告は浅利、江藤の両被告と懇意にしていた。
浅利被告は矢野被告と共謀。〇七年八月九日ごろ、別府市内のホテルのレストランで、江藤被告に、長男と長女が試験に合格するよう有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨で百貨店の商品券二千円券五百枚(計百万円相当)を供与。同十月十四日ごろ、別府市南立石の江藤被告方で、江藤被告に、長男と長女が試験に合格したことに有利かつ便宜な取り計らいを受けた謝礼として現金三百万円を渡し、江藤被告の職務に関してわいろを供与した。
【量刑の理由】
当時、県内の小学校の教頭を務めていた被告が教員仲間として懇意にしていた矢野被告から勧められ、江藤被告にわいろを供与した贈賄の事案である。
犯行の動機に関し、被告は大分県の教員採用試験においては、本来不合格となるべき受験者が口利きによって合格しているとのうわさを耳にしていたので、自分の子どもたちが仮に合格点に達していても不合格にされる恐れがあるのではないかと思っていたとも述べているが、だからと言って、自らも不正に手を染めることが許されるものでないことは当然である。
しかも、江藤被告にお願いすれば、合格点を多少下回っていても合格させてもらえるのではないかと思っていたというのであるから、単にほかの受験者が不当に有利に扱われることの反動として不利益な扱いを受けることを回避しようとしたものとは言えない。
そして、そもそも本件では、わいろを供与したことの刑事責任が問われている。そのような行為がいかに許されないものであり、口利きとは質的に異なる犯罪行為であるかは容易に分かることであり、だからこそ被告も当初、金品を贈ることにしゅん巡した(ためらった)はずである。不正のうわさもある中、自分の子どもたちを何としても合格させたかったという親心も理解し得ないではないが、以上のような事情を考慮すると動機に酌むべき点があるとは言い難い。
犯行の態様についても、矢野被告の勧めにより、犯行を決意したとはいえ、二回にわたり、計四百万円相当の多額の金品を江藤被告に供与したのであるから、悪質と言わざるを得ない。
そして、県教委幹部に多額のわいろを供与し、しかも供与したのが小学校教頭の要職にあった(人だった)という本件犯行が、社会に与えた衝撃は大きく、大分県の教育界に対する国民の不信感をぬぐいがたいものにしたというべきであって、犯行の結果は重大である。以上によれば、被告の刑事責任は重い。
他方、被告は本件犯行発覚後、捜査公判を通じて真摯(しんし)な反省の態度を示している。また、懲戒免職になるなど既に相当の社会的制裁も受けている。なお、捜査の過程で、大分県の教員採用試験においては、かねて口利きによる不正が行われていたことが判明しているが、そうした組織絡みの不正に対する社会的非難を被告一人に負わせるのも相当でない。そこで、これらの被告のために酌むべき事情も総合考慮すると、被告に対しては主文の刑を科した上、その執行を猶予するのが相当である。
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