かぼす的複眼思考~中央と大分、複眼の発想

介護保険10年目の見直し

[2010年12月20日 09:39]

 大分大学福祉科学研究センター教授 椋野美智子さん

 朝夕まちを走るデイサービスの送迎バス、道沿いに建つしゃれたデザインの介護保険施設、今や大分でもなじみの風景を支えているのは10年前に始まった介護保険である。その見直しが厚生労働省で進められている。
 この間に介護サービスを受ける方は2・6倍に増え、全国で380万人に達した。この間の高齢者の増加は1・3倍。つまり介護を必要とする人が増えたというより、サービスの充実で実際に使うようになった人が多いということだ。
 それはいいことなのだが、サービスの充実は当然に費用の増大につながる。10年間で3・6兆円が7・9兆円へ。その2割を賄う高齢者の保険料はこのままでは平均月額5千円を超えると見込まれる。効率的で重点的なサービスへ見直しが求められるのももっともである。
 費用の増大を抑えるために、軽度者の家事援助を介護保険の給付対象外にすべきとの意見もある。しかし、この10年間、家族の状況は大きく変わった。独り暮らし、夫婦のみで暮らす高齢者は着実に増え、子との同居は4割台、共稼ぎ世帯も専業主婦世帯を上回る。その結果、介護者の3割は男性、4割は60歳未満の就労年齢層、逆に1割は80歳以上である。
 となれば、まずは家族介護者を支えることが大切だ。仕事と介護の両立支援、老老介護の家族全体の生活支援、それから、男性介護者の支援である。家族による虐待は4割が息子、2割弱が夫であり、家事が苦手で地域との付き合いの少ない男性が介護でストレスを抱え込む姿が浮かび上がる。
 それとともに、地域の支え合い活動の強化に介護保険としても取り組むこと。これは地域包括支援センターの新たな仕事となろう。配食やコミュニティーレストラン、有償ボランティアによる家事援助などさまざまな生活支援サービスの受け皿なしに給付を外せば、健康を支える生活の基本条件が損なわれ、かえって医療や介護給付を増加させることになりかねない。
 県内でも地域の状況はさまざまである。通院や介護は送迎バスがあるが、域内に店がなく路線バスの廃止で買い物に行く足がない地域や、坂道が多く自立と認定されていても公民館まで行けない地域もある。
 支え合いの担い手は、若い世代で減少した専業主婦に代わって、元気な退職高齢者に期待が集まる。支え合いの活動を地域振興や交通対策などの施策につなげる、商工会や民間会社と連携する、障害者の就労支援の場とするなど地域の実情に合わせて柔軟に取り組めば、さまざまな介護保険外のサービスが可能となる。
 県民のこの問題への関心は高く、地域福祉や認知症がテーマの講演会やシンポジウムには多くの人が集まる。来年度には臼杵市主催で介護保険推進全国サミットも開かれる。また、県内には先進的な取り組みを続ける介護施設も多く、韓国などからしばしば視察客が訪れる。
 地域主権の時代である。今回の介護保険の見直しでも確実に市町村の裁量は拡大する。市町村が住民やさまざまな関係者とともに、これから日本を超えるスピードで高齢化が進むアジアの国々にも提案できるような、地方都市・農村型の福祉モデルを大分の地に構築することを大いに期待している。

 【むくの・みちこ】日田市出身。東京大学卒。1978年、厚生省に入省。浦和市(現さいたま市)福祉部長。厚生省時代、少子化をテーマに厚生白書を執筆。日本社会事業大学教授、内閣府参事官、厚生労働省社会・援護局総務課長などを歴任。2006年から現職。

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