かぼす的複眼思考~中央と大分、複眼の発想

外国人の受け入れを

[2010年10月11日 09:36]

丸紅相談役
辻亨さん

 商社に入社し、20代後半、イランに5年間勤務した。舞台は首都テヘラン。家主をはじめ、近所の人は日本に興味を持ち親切だった。
 日本のいろんな品物を売り込むのが仕事で、大手のお菓子会社のアリ・ホスロウシャヒ社長と親しくなった。立派な人で、尊敬していた。
 工場を見学したら、仕上げの梱包(こんぽう)の工程に身体障害者を雇っていた。「どうして」と質問すると、「彼らは普通なら雇ってもらえない。できる作業に就かせている」と答えた。
 彼は私に忠告してくれた。「仕事をしていると、うそをついて言い逃れしたいときがあるが、それだけはやめろ。後で同じ質問をされたら、以前どう言い逃れしたか覚えていない。相手は覚えている。うそを言うと、ビジネスマンとしての信用をなくしてしまう」
 日本に帰国してから28年後、私は社長になった。会社が苦しいときで、銀行と交渉を重ねた。その都度、ホスロウシャヒ氏の忠告を思い起こし、言い逃れのウソは絶対につかなかった。後で振り返ると正解だった。
 こんな経験から異文化や宗教の違う人との共生は難しくないと思う。
 ヨーロッパでは1960年代の好景気時、トルコや東欧、北アフリカから単純労働者を受け入れた。ところが、オイルショック後は、単純労働者が余るようになり、現在まで尾を引いている。
 一方、日本は少子化でこれからどんどん人口が減る。これまでは農山村に人が生活し、里山が形成されていた。1次産業はいずれも後継者不足で、維持が難しくなり、国土の荒廃が進むだろう。
 日本人は外国からの観光客や留学生などはいいが、定住については抵抗感がある。ただ、“食わず嫌い”の面もある。
 ポイントは言葉の問題だ。日本はブラジルなどから日系人を受け入れているが、日本語が十分にできないため、かれらだけで閉じこもり、子どもたちは学校に行かない。
 経済連携協定(EPA)による看護師、介護福祉士の受け入れも、日本語で国家試験を受けねばならず、ハードルが高すぎる。現場は人手不足なのに、海外からの人材を拒んでいるようだ。
 例えば、政府開発援助(ODA)で各国に日本語学校を設け、一定の成績をビザ発給の条件にすればいい。
 日本の農業、林業、水産業の技術を学びたい意欲を持つアジアの若者は多い。日本の技術を学んで祖国に帰りたい若者は帰国させ、日本に住み着きたいと望む若者は一定の資格審査に合格すれば、定住させればいい。
 大分県は留学生の人口比率が日本一。他県に比べ、グローバル化が進み、外国人を受け入れる素地ができている。立命館アジア太平洋大学(APU)に農学部、林学部、水産学部を設けることだって考えられる。
 日本は移民受け入れについては、後発。それゆえヨーロッパの先例、あるいは失敗を参考にして、よりよい受け入れシステムをつくることが可能だ。大分県がその先進地、トップランナーになればと願っている。

 【つじ・とおる】竹田市出身。東京大学卒。1961年、丸紅飯田(現丸紅)に入社。取締役、常務、専務を経て、99年から4年間、社長を務めた。会長を経て現在相談役。昨年6月まで2年間、在京大分県人会長を務めた。豊の国かぼす特命大使。71歳。

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