時事コラム「風」

古里守る「主役」は住民

[2010年12月08日 09:49]

 「ふるさとを守る主役はふるさとの人たち。国、県はあくまでもサポート。だから、ふるさとに住んでいる人たちが舞台に上がらないと始まらない」。水土里(みどり)を守るシンポジウムで山岡和純(かずみ)さん=国際農林水産業研究センター主任研究員=が呼び掛けた。
 「水」は地域を潤す農業用水。「土」は食料を生産する農地。「里」は豊かな自然。長い歴史の中で築かれた、こうした資源や農村の景観などの保全が難しくなっている。次世代に引き継がれる水土里を考えるのがシンポジウムのテーマ。
 山岡さんはこう続けた。「病気の患者が百人いれば一人一人容体は違う。地方が百あれば一つ一つの地域にあった処方せんが必要。一緒になって考える体制をつくろう」と。
 今、都会では家庭菜園がはやりだという。耕作放棄地を小面積の区画にして貸し出す。農家にとっては一定の使用料が入り収入は安定している。また食に対する意識改革にもつながっている。今までは安い外国産を購入していた人が、農業を体験することで、ちょっと虫食いだが有機栽培の安全、安心野菜を買い求める。菜園利用者が農業の新規参入者になるという広がりも出てきたという。ここでは農地の貸し出しが処方せん。
 有機農法で有名な宮崎県綾町。本格的な有機農法に取り組むきっかけとなったのは1967年。当時、「健康で住みよいまちづくり」をスローガンに町民の健康維持、食生活の改善の一環として家庭菜園による野菜作りが提唱された。有機物を投入した土作り、野菜の種子を無料配布、家庭菜園コンクールなど、町民の自給運動は広がりを見せた。そして40年以上が過ぎた。町民が舞台に立った取り組みは「有機の綾」として有名になった。有機農法という処方せんが綾町を活気づかせた。
 ふるさとを良くする知恵と工夫。お金はいらない。自分の得意なものを出し合って舞台に上がろう。そうすれば水土里はよりよい形で次世代に引き継がれる。(編集局次長兼地域報道部長・高橋直義)

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