1月31日、玖珠町民は「公約の重さ」と「新しい風の強さ」を感じたのではないか。この日、町長選の投開票が行われ、新人の朝倉浩平氏(63)が後藤威彦前町長らを破って当選した。「公約」と「風」が選挙の行方を決める鍵となった。
発端は後藤氏に対するリコール運動。前回選挙で後藤氏は総合運動公園の建設中止を公約に掲げて当選したが、就任後、建設推進に転換する。こうした政治姿勢を問うとしてリコールを求める署名活動が始まったが、後藤氏はそれを断ち切るように町長を辞職、選挙に打って出た。
一方、朝倉氏。出馬表明は選挙告示日のわずか3週間前。高校卒業後、ずっと町を離れており、無名に近かった。同級生だけが頼りの手探り選挙だったが、後藤氏はもとより、組織選挙を展開した別の新人も振り切って当選した。
朝倉氏の主要な勝因は、公約変更への不信感と選挙に対する意識の変化が町民にあったことだろう。
公約を絶対に守れとは言わない。就任後、財政事情や情勢の変化で変更せざるを得ない場合も出てくる。ただその際は十分な説明が必要となる。後藤氏は説明を尽くしたと考えているだろうが、選挙結果を見る限り、町民はそうは受け止めていなかったことになる。
もう一つの意識変化。大都市に比べて農村部は、まだまだ地縁血縁選挙や締め付け選挙が通用するとみられていた。しかし、そうではなかったようだ。有権者が自分で考えて選ぶという「新風」が吹いていた。
個人の自由意思で投票するのは当たり前であり、「何が新風か」と言われそうだが、それを十分には実践できない選挙風土が特に農村部にはあった。しかし、全国的に風向きが変わり始めており、玖珠町長選にも及んだのではないか。
朝倉町長は就任したばかり。どのような町政を展開するかはこれからだが、一筋縄ではいかない現実の政治の中で困難に直面することもあろう。そのときは従来の選挙を変えた町民の思いとは何かを考え、行政運営に当たってほしい。
(編集局次長兼地域報道部長・松尾和行)
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