稲刈りのシーズンを迎えた。別府市の山あいの棚田でも、たわわに実った稲穂がこうべを垂れ、黄金色に波打つ姿が美しい。日本は「瑞穂(みずほ)の国」だと、あらためて実感させられる。
収穫を前に、農家の人々は田んぼの草取りに汗を流していた。穂を傷めないように注意しながら、稲の成長を妨げるヒエなどをかまで刈っていく。
高齢化が進む農家にとっては重労働。「ヒエがあっても稲刈りに支障はない」と言うので、そこまでしなくても?と尋ねると、「この田は手入れが行き届いてないと思われたくないやないか」と70代の男性。先祖代々の田を守らなければならない―。合理性や経済性だけではない、そんな農家の心が長年、日本の食を支えてきたのだろう。
農林水産統計によると、県内の水稲の作付面積は2万4800ヘクタール、収穫量は12万8700トン(2008年度)。県土の4%は水田という計算になる。
だが、コメだけでは食っていけない時代になった。コメの生産者価格は60キロ当たり1万3千円程度。30年前の価格の4分の3程度というのが現状だ。
コメに限らず農業経営は厳しさを増している。若者たちは農村を離れ、農家戸数は減少の一途。いつか、国内で食料が生産されなくなる日が来るのではないかとさえ思えてしまう。
産業としての農業をどうするか―。日本の農政は大きな転機を迎えている。民主党は衆院選のマニフェストで、「戸別所得補償制度で農山漁村を再生する」とうたっている。だが、補助金や補償制度は対症療法にすぎないだろう。
食生活が変わり、安い輸入食材があふれる昨今。個々の食品の安全性が問題になって初めて、人々は食の大切さに気付く。命をはぐくむ食には、価格だけでは語れないものがある。消費者みんなの意識が変わらない限り、日本の農業は守れないのかもしれない。
観光でも体験でも何でもいい。まずは田んぼへと足を運ぶことから始めたい。収穫の秋。さまざまな喜びに出合えるに違いない。
(別府支社編集部長・小田圭之介)
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