時事コラム「風」

「更正」地域で支援を

[2009年07月21日 09:57]

 「皆さん、夢を自分の手でつかみましょう」
 熱気にあふれた発表に聴衆から大きな拍手が起き、会場は和やかな雰囲気に変わった。かすかに明るい笑い声も聞こえた。
 発表したのは少年院の院生、聴衆は更生保護などに携わる人々。院生の前向きな思いが拍手に、更生を支援する側が励まされたことに笑いを誘われたようだ。
 「社会を明るくする運動」の強調月間(7月)に合わせ、県内の少年院で開かれた意見発表会を訪ねた。そろいのポロシャツに丸刈り頭。窃盗や傷害などの罪を犯し、矯正教育を受けている院生の代表数人が「将来の夢」「非行の反省」―などの題で発表した。
 発表会の開会前や休憩時間に来訪者が交わしていた話が心に残った。それは、院生が少年院を出た後の仕事や生活、周囲の環境を心配する内容だった。
 教(きょう)誨(かい)師(し)として少年院を度々訪れている宗教家は「院生たちは自分を心から心配してくれる人、信頼できる人を求めているんです。何より心安らぐ家庭が必要です」と話した。
 その言葉は院生の発表内容と、ぴたりと重なった。「彼女が待っていてくれる。ここを出たら帰る場所をつくりたい」「妻の妊娠が分かった。幸せな家庭をつくりたい」…。さらに「過ちを繰り返してしまったが、涙を流してくれる母のために辛抱強く働きたい」と誓った院生もいた。
 だが、“決意”を貫くことができないケースもある。「もう少年院に戻ってくるなよ。頑張れよ、と送り出す。でも再び戻ってくる子がいる。みんなが好ましくない“関係”を断ち切れるわけではない」。そんな話を少年院に勤務したOBから聞いた。
 被害者への償いのため、本人の将来のため、さらに家族や友人のためにも更生は重要だ。それには、地域社会の理解と協力が欠かせない。更生保護の創始者とされる川村矯一郎(1852~91)は大分県出身。その“後輩”として、明るい社会づくりに、思いをめぐらせてみてほしい。

社会部長・甲斐豊純

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