時事コラム「風」

泉都再生へ“種”まき

[2009年05月26日 10:28]

 ちょっと古い話だが、一九八〇年代の後半、「朝シャン」がブームとなった。「朝にシャンプーをしましょう」と、大手化粧品メーカーがテレビCMで呼び掛けたのがきっかけだった。
 どうしたらシャンプーの売り上げを伸ばせるか。一日二回使ってもらえばいい。そんな発想が基になったという。朝シャンは一つの生活文化をつくり出した。ニーズ(消費者の要望)に応えるだけでなく、企業がシーズ(種の意味=新しい技術やアイデア)を提供して成功した代表例だ。
 では、どうしたら観光客を増やせるか―。別府観光の低迷が続く中、いま、泉都の人々は“新しい観光スタイル”を提案し始めた。
 三十一日まで開催中のハットウ・オンパク(別府八湯温泉泊覧会)。体験型を中心としたプログラムの中には、興味深いものがある。
 別府を宿泊拠点として県南地区に日帰り旅行をし、広域観光の魅力を伝えるプログラム。泊まらなくてもホテルや旅館の朝食を味わえるプログラム。住宅街を散策してうわさのカフェを訪ねたり、夜の街をはしごするなど、既存の素材を斬新に組み合わせたまち歩き…。観光客に連泊を促したり、これまでとはひと味違う行動を楽しんでもらうための“種”をまく試みだ。
 棚田の景観を売りとする別府市内成地区では、立命館アジア太平洋大学の研究会が古民家を改修し、安く快適に長期滞在できる「ホリデーハウス」を設置。地域の魅力を感じながら、田舎でのんびり過ごしてみませんかと呼び掛ける。
 街全体を“美術館”とし、六月十四日まで市内各所を巡ってもらう「別府現代芸術フェスティバル2009『混浴温泉世界』」。苦戦しているものの、アートを切り口とした新しい観光振興への挑戦でもある。
 温泉、食、自然、芸術・文化、施設…。泉都は観光資源に満ちている。潜在的な魅力を掘り起こし、新たな旅の形を提案できれば、その可能性は限りない。
 観光客を魅了するシーズをどう生み出していくか―。泉都再生のキーワードの一つといえそうだ。
(別府支社編集部長・小田圭之介)

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