明日を守る 番外編・防災のポイント20

イントロダクション

番外編
防災のポイント20


「中山間地の営みを抜きに 都市の防災は図られぬ」

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新潟県中越地震で水没したまま取り残された民家(旧山古志村、06年10月)

 「え、まだ仮設住宅があるの?」―。一年前、新潟県中越地震(二〇〇四年十月二十三日)で被災した旧山古志村(長岡市)の取材へ向かったときは恥ずかしいことに、その程度の認識しか持っていなかった。当時、二千人余りの”村民”のうち、帰村できていたのは約百人。今も、約六百人が仮設住宅で暮らしている。被災地全体では千六百人以上に上る。
 山古志は、ニシキゴイ養殖、闘牛など独特の産業や文化がある中山間地。過疎・高齢化の問題を抱えている。その一帯で起きた地震は集落間を結ぶ道路や美しい棚田をずたずたにした。
 豪雪による復興の遅れ、長岡市中心部への通勤や通学の不便さから移転を選択した人もいる。被災後、90%を超えていた帰村希望者は70%に減り、地域の過疎・高齢化がさらに進行した。住民はボランティアらの協力を得ながら、地域の再生に汗と知恵を絞っている。
 そんな被災地では「なぜ”平場”(都市部)で生活を再建しないのか」との声が聞こえてくるという。山間部にある被災地の復興は、税金の無駄遣いと言わんばかりである。中山間地の暮らしの営みを抜きにして、都市の防災は可能だろうか。取材を通じて得た答えは「ノー」だった。
 中山間地には、住民が代々、手を加えてきた杉・ヒノキの森林や里山が広がる。棚田と同様、荒廃すれば大雨を吸収するスポンジのような役割(保水力)が損なわれ、下流域を川のはんらんや浸水が襲う。
 近年は、温暖化の影響が指摘される記録的な大雨が各地で観測され、水害や土砂災害が増えている。食料生産や癒やしの場としてだけでなく、防災の面でも、「都市と中山間地は依存関係にある」と認識すべきだ。
 大分県は70%が中山間地。豊かな緑や食材に恵まれている半面、災害と隣り合わせでもある。地域の実情に合わせた一次産業の振興、コミュニティーの活性化が、山林や水田の多面的な機能を守る「住み手」を確保し、防災に結び付くことにならないか。
 中越地震は、過疎対策が行き詰まりを見せる中で、中山間地で深刻化する問題に目を向けさせた。震災を対岸の火事とせず、山古志の復興に注目し続けなければならない。
 (経済部・安東公綱)


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