大分川に近い大分市錦町の住宅地。家の裏手に回ると、鉄板でふたをした井戸があった。「普段は電気でくみ上げ、トイレや洗濯に使っている。少しでも皆さんのお役に立てば」。主婦関美保子さん(65)が言った。
災害時の生活用水の不足を想定し、大分市が二〇〇三年度から登録を進めている「災害時市民開放井戸」の一つだ。これまで市内八十四カ所の井戸が登録され、災害時には所有者の善意で、誰でも使える。阪神大震災後の神戸市の取り組みを参考に導入した、という。
「飲料水は救援物資で何とかなると思う。でも、生活用水はどうでしょうか。特に、赤ちゃんや病人がいる家庭では、洗濯できないことほど困ることはないですからね」。関さんはこう考える。
周辺ではかつて、どこの家にも井戸があったが、水道と洗濯機などの普及に伴い、一九六〇年代の半ばを境に消えていったという。今では井戸の残る家は数軒ほど。近くの伊藤富貴江さん(86)方では、井戸水は飲めることが確認されている。「水は日常生活に最も必要なもの。みんなが助かるものなら協力したい」。
県内には約三万の井戸があるとみられ、その役割が見直されつつある。県も本年度、県内の各小学校区ごとに二カ所(県内で計七百十六カ所)を目標に「災害時協力井戸」の登録事業を始める。「水質検査費用を助成し、災害時の井戸の利用を広めたい」としている。
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