「雨の音を聞くと、心配になる」。二〇〇五年七月十日、一時間に八四ミリの集中豪雨に見舞われ、近くの川がはんらんした九重町・筋湯温泉。近づく梅雨を前に、住民は口をそろえた。
「トタン屋根を打つ雨の音がひどかった」と、旅館経営の男性(60)は振り返る。午前三時ごろ、鳴り響く電話の音で目覚めると、旅館横の第二筋湯川に、根こそぎ流れた大木が山のようにたまっていた。「川からあふれた濁流は、旅館の一階にある倉庫の中で渦巻いた。引き戸が外れ、冷凍庫や棚が消えていた」という。
濁流は旅館街の細い坂道へと流れ込み、周辺の旅館など八軒をのみ込んだ。「ガラス窓が割れ、濁流が旅館の中を洗った。調理場が泥で埋まり、田んぼのようになった。三週間ほど休業した」とおかみの一人。土産品店を営む辛川清女さん(88)は「陳列棚が浮いていた。筋湯で五十年間ほど暮らしてきたが、あんな被害は初めて。水は怖い」と話す。
簡易水道が破壊され、筋湯温泉のほとんどの旅館は一時休業に追い込まれた。近くの湯坪温泉では、土砂崩れの影響で温泉供給が止まった。局地的な集中豪雨は九重町内の基幹道路となっている県道を寸断。夏の九重観光に大きなダメージを与えた。
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